第8話(最終回)「てっぺんからの景色! 私たちが築いた明日」
地上から見上げていた巨大なコンクリートの塊は、
いつの間にか私を、空に近い場所へと連れてきてくれた。
真っ白だった安全靴はもうボロボロで、
ヘルメットには現場の記憶が刻まれた無数の擦り傷がついた。
図面の中でしか知らなかった建物が、
レンさんの鉄筋で強くなり、
パネ美さんの型枠で形を成し、
ホースさんとボルトさんが命を吹き込んだ。
バラバラだった私たち5人の「正解」が、
一つの大きな構造体になって、今日、空を突き刺している。
佐藤てっこ、本日はこの建物の「頂上」へ。
ここで見る景色は、きっと一生、忘れられないものになる。
第1期、完結。
私たちの築いた「明日」が、今、夕陽に染まっていく。
1. 『空に一番近い場所、終わりの始まり』
あんなに遠く、あんなに高く見えた最上階が、今、私の足元にある。
「上棟」。
それは建物の骨組みが一番高いところまで到達したという証。
真っ白だった安全靴はもうボロボロで、ヘルメットには無数の擦り傷がついた。
図面の中でしか知らなかった建物が、
レンさんの鉄筋で強くなり、
パネ美さんの型枠で形を成し、
ホースさんとボルトさんが命を吹き込んだ。
バラバラだった私たち5人の「正解」が、
一つの大きなコンクリートの塊になって、空を突き刺している。
佐藤てっこ、本日はこの建物の「頂上」へ。
ここで見る景色は、きっと一生、忘れられないものになる。
2. 最後のコンクリート
最上階。
最後の打設を終えた現場は、どこか祭りの後のような、静かな熱気に包まれていた。
「……終わったわね」
パネ美が、汗を拭いながら金コテを置いた。
「……1ミリも、ズレてない」
レンが、垂直に立つ避雷針の根本を確認して、小さく満足そうに呟く。
「てっこちゃん、これでもう、上から水が漏れる心配はないわよ!」
ホースがガハハと笑いながら、てっこの肩を叩く。
「……あとは私の線が、全フロアで光るのを待つだけっす」
ボルトも、珍しくヘルメットを脱いで、夕方の風に髪をなびかせていた。
3. 上棟の儀
現場の片隅で、ささやかな「上棟式」が執り行われた。
本来は厳かな儀式だが、女子5人が集まれば、それは最高に賑やかな打ち上げになる。
「乾杯!」
ノンアルコールビールがカチンと鳴り響く。
「最初はさ、このひよっこ監督、大丈夫かよって思ってたけどね」
パネ美がニヤニヤしながら、てっこの頭を撫でる。
「……でも、あんたの執念、悪くなかったわ。鉄筋の検査の時、泣きそうになりながら食らいついてきたの、忘れないわよ」
てっこは、込み上げてくるものを必死に堪えた。
「私……皆さんに助けられてばかりで……」
4. 頂上からの景色
「見て、てっこちゃん」
ホースが指差した先には、夕日に染まる街並みが広がっていた。
自分たちが作った建物の影が、長く、力強く地面に伸びている。
「あの街のどこかで、誰かがこの建物を見上げて、『あぁ、私の家ができていく』って思ってる。……私たちは、その希望の骨組みを作ったのよ」
レンが静かに付け加える。
「……建物は、完成すれば私たちの手を離れる。でも、この中に込めた私たちの技は、何十年もここに残り続ける」
てっこは、自分の手のひらを見た。
豆が潰れた跡、消えない鉄の匂い。
それが、自分がここで生きた証だった。
5. 次なるステージへ
「よし! 下りるわよ! 明日からは内装の天音ちゃんたちが乗り込んでくるんだから!」
パネ美の号意で、5人はゆっくりと仮設階段を下りていく。
「佐藤監督!」
下から所長が呼んでいる。
「お疲れ様。……いい顔になったな」
てっこは、最上階をもう一度見上げ、深く一礼した。
「はい! まだまだ、これからです!」
明日からは、内装、仕上げ、そして引き渡し。
第2期の幕開けを予感させる、明るい月が空に昇っていた。
【第1期 完結】
【今回の現場あるある:最終回スペシャル】
上棟の日は、なぜか全員が「自分たちの建物」を自慢げに見上げてしまう。
終わった瞬間に「次の現場」の段取りを考え始めるのが、プロの性。
現場監督の靴が汚ければ汚いほど、その現場が愛されていた証拠。
第1期、完結です! お疲れ様でした!




