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第5話「光る配線、消える影! 電気屋ボルトは捕まらない」

建物に形ができ、水が通る道が決まった。

次に必要なのは、この巨大な塊に「神経」を通すこと。

暗闇に光を灯し、冷えた部屋に熱を送り、

遠く離れた誰かと誰かを、見えない線でつなぐ仕事。

けれど、その重要な神経系を担う職人は、

いつの間にか現場の「すみっこ」に現れ、

気づけば天井の隙間へと、影のように消えてしまう。

稲妻ボルトさん。

ヘッドホンから流れるリズムに乗り、

複雑に絡み合う配管のジャングルを、軽やかに、冷ややかに泳いでいく。

彼女が通った後には、虹色の電線が美しく整列し、

無機質な壁の中に、目に見えないエネルギーの脈動が宿る。

「……私の線、踏まないで。感電するっすよ」

冗談か本気かわからない言葉を吐きながら、

彼女は誰よりも繊細に、この建物の「未来」を繋いでいく。

佐藤てっこ、本日は暗闇の探索者。

光が灯るその瞬間を目指して、

摩訶不思議な電気屋さんの背中を、必死に追いかける。

1. 現場の「幽霊」?


「……ねぇ、誰か見なかった? さっきから事務所の図面の上に、身に覚えのない付箋が増えてるんだけど」


てっこが首を傾げながら現場を回っていると、天井の配管の隙間から「……それ、私っす」と、気だるげな声が降ってきました。


見上げると、そこには細い配線ダクトの上にひょいと腰掛けた、ヘッドホン姿の女の子。稲妻ボルトの初登場です。


「うわぁっ!? び、びっくりした……! あなたが電気屋さんの稲妻さん?」


「……ボルトでいいっすよ。てっこさん、そこのコンセント位置、15センチ左にずらさないと、パネ美さんのボード下地とぶつかって詰みますよ」



2. 誰も通れない「隙間」をゆく


ボルトの仕事は、レンの鉄筋やホースの配管の「わずかな隙間」を縫って、何百本もの電線を通すこと。


彼女はまるで忍者のように、脚立を使わずとも梁から梁へ移動し、スルスルと線を送り込んでいきます。


「ちょっとボルト! 私の排水管に線を巻き付けないでよ、ノイズが乗るでしょ!」


下からホースが叫びますが、ボルトはイヤホンを指差して「聴こえなーい」というジェスチャー。

「……あの二人、相性最悪ね」


レンが鉄筋の陰からボソリと呟きます。



3. 絶縁体女子のこだわり


てっこは、ボルトの作業を近くで見て驚きました。

バラバラだった何十本ものカラフルな電線が、彼女の手を通ると、まるでお洒落な編み込みヘアのように美しく束ねられていくのです。


「……電気は目に見えないから。せめて線くらいは綺麗に並べとかないと、後で誰かが直す時に迷子になるっす」


普段はやる気なさげなボルトが、電線をニッパーでパチンと切る瞬間だけ、瞳に鋭い火花が宿ります。



4. 停電パニック!


現場の仮設照明がパッと消え、真っ暗闇になりました。


「えっ!? ブレーカー!?」「何も見えないわよ、危ない!」


パネ美やホースの声が響き、てっこがパニックになりかけたその時。


「……慌てないで。ただの過負荷っす。30秒で直します」


暗闇の中、ボルトのヘルメットについたライト(ヘッドライト)だけが、蛍のようにスッと移動していきます。


カチャカチャという精密な金属音の後、現場にパッと光が戻りました。


「……復旧。てっこさん、事務所で電子レンジと電気ポット同時に使うの、やめたほうがいいっすよ。落ちるんで」


「す、すみません……!」


てっこは、自分たちの生活の「スイッチ」を握っているのは彼女なんだ、と痛感しました。



5. 5人の「すみっこ」



その日の休憩。


レン、パネ美、ホース、ボルト、そしててっこ。ついに5人の女子職人(+監督)が現場の隅っこに集まりました。


ボルトは相変わらず端っこでスマホをいじっていますが、パネ美が「ほら、電気屋さん、これ食べな!」と差し出した飴玉を、黙って受け取りました。


「これで全員揃ったわね。さぁて、これからますます賑やかになるわよ!」


パネ美の言葉通り、現場の「音」に、ボルトが聴いている軽快なテクノポップが加わりました。

【今回の現場あるある】


電気屋さんは、なぜか「えっ、いつの間にそこにいたの?」という場所に現れる。


他職種が作った隙間を縫って仕事をするので、実は一番現場の「納まり」に詳しい。


監督の知らないところで、こっそり仮設電源の不具合を直してくれていたりする。

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