表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

 王女がいた。聡明で、美しくて、何より他者を思いやる力があった。

 戦火の(うず)に巻き込まれんとするこの国には、王女のような『思いやり』のある人⋯他者のために祈れる人が重宝された。一箇所に集められ、皆一様に神を崇めた。

 即ち、修道院の確立である。


 まあ、王女には関係のない話だ。王女の15歳のパーティーは昨日終わった。まだ親から貰っていないプレゼントがあるが⋯

「⋯あら、もう持って来てくれていたの」

 この通り、王女の侍女──ジュノが持ってきてくれていたらしい。

「王女様、そろそろ起きてください。いくら今日が休日と言えど、王女様の仕事は明日もあるのですよ」

 こう現実を突きつける物言いをする侍女こそジュノだと言っておこう。

「分かっているわ。それに、今日一日は城探検として使おうかなって思っていたの」

「城探検?まさか、城下で流行ってるヒーローものの小説にハマったんじゃないでしょうね」

「そんなことないわ。でも、この行為にぴったりと合う言葉は他にないでしょ?」

 そう言えば、うーむと唸って黙り込むジュノ。彼女を横目に、王女はルンルンランランと支度をする。万に一度でも『王女が寝ぼけ眼で城内を徘徊していた』などという噂が立ってしまうことを恐れたからだ。

「鍵、忘れないで下さいよ」

「もちろん、忘れるわけがないでしょう?」

 ジュノの言葉に、ニンマリと笑って答える王女。ベッドの側にある小さな丸テーブルに置かれた、これまた小さな鍵束を人差し指でくるりと回す。

「王女様、そんなことしたら落ちますよ」

「落ちるわけがないでしょう」

 何を言っているの、と不思議そうな顔でジュノを見る王女。次の瞬間、ジャランと金属音がして、鍵束が床に落ちた。


 ⋯⋯沈黙(落ちたね)


「い、行ってくるわ〜〜」

 恥ずかしさからか、不満からか、王女は逃げるようにして部屋を出た。

 残されたジュノは呆れたように王女が出て行った扉を見つめていたが、やがて更に呆れたように呟いた。

「あーあ、言わんこっちゃない」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ