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──おばあちゃん、ねむれないよう。
「あらあら、困った子ねぇ。絵本でも読んであげましょうか?」
──ほんとう?やったあ!それじゃあ⋯うーん、どれにしよう。
「そうねぇ、これなんかどうかしら?」
──『あるおひめさまのあい』?おひめさま、ってだあれ?
「そのお話はね、昔々に本当に会った話を基にしているの。もちろん、おひめさまも昔いた人よ。本当に、あったこと⋯いたお方なの」
──おばあちゃん?なんで、そんなにかなしそうなの?
「⋯!あら、そんな表情してたかしら?」
──ふっふーん!あたしにはわかっちゃうんだよ!
「ふふ、良い子だね。それじゃ、それを読みましょうか」
──はーい!
「此方においで。⋯そう、いい子だね」
「それじゃあ、はじまりはじまり——————」
これより語るは或る物語。物語と侮る勿れ、『おひめさま』はかつて本当に居た王女。
『おひめさま』は聡く、美しく。清く、正しく。然して姫の善悪は城内にて育まれたもの。何れは崩れ、価値観は改めなければなるまい。
姫は一人と出逢った。彼は病に侵され、彼の出自は王を混乱させた。そして、彼との出逢いは姫に、“とあるもの”を齎した。
即ち、───である。