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海辺の街
白い花を手に持ち、私は部屋の戸を開けた。
薄青色の空の花瓶が窓辺に置いてある。
花瓶を手に取り、水を注ぐ。
それをテーブルの上に置いた。
花を入れた。
埃が窓際にたまっている。
私は思い切り、窓を開けた。
カーテンが大きく靡く。
潮の香りが部屋を通り抜けた。
街並みの隙間から、青い海が見える。
うみねこの鳴く声が聞こえる。
青い海に、大きな船がいくつも並んでいる。
窓際に花瓶を置いた。
私は玄関へ向かい、ドアを開く。
海風が全身を包んだ。
一歩前へ。
黄色のワンピースがぶわりと膨らむ。
誰かが私を呼んでいる。
懐かしい声がする。
誰だっけ。
その声をたどって、石畳を走る。
階段を駆け下り、街道にでた。
空から轟音が響いた。
白い花びらが降ったのかと思った。
ビラだった。
勝利を我が国家に。
大きな影が空を遮った時、歓声が上がった。
怖い。
それでも人々の喝采はやまない。
勝利のため。
その時、手が差し伸べられた。
大好きな手だ。
私はぎゅっと握った。
「ーーー。いこうか」
アラーム音がする。
目の前にはいつもの天井が広がっていた。
まだ薄暗い。
私は起き上がった。
「また夢か。」




