王宮図書館
ライン様がいなくなった部屋を後にして、セリさんに自室へと案内してもらう。ライン様の部屋と同じ廊下の先にあった。入ってみたら予想通り豪華。庶民出身としましては気が引けてしまいます。
「ごゆっくりどうぞ。ご要望があれば何なりとお申しつけください」
「あのッ」
「何で御座いましょう」
そのまま帰っていきそうだったので、思わず呼び止めてしまった。セリさんが真顔で続きを待っている。早く言わないと。
「すみません。図書館はありますか?」
「御座います。ご案内いたしますか?」
「お願いいたします」
よかった、あるんだ。
セリさんが来た時とは反対の廊下を歩いていく。私は大人しくついていった。
だって、知り合いゼロから始まる王宮生活。絶対初日から時間を持て余す。なんなら今の時点で一人で部屋に残されて暇確定だった。
スマホ無し生活の世界で何を娯楽にしたらいいって、やっぱり本でしょ。紙の本強い。前世ではデータどこでも持ち運べて最高って電子で買うことが多かったけど、緊急事態はやっぱりアナログだね。
しばらく歩くと、王宮の外れにある図書館に辿り着いた。看板にはそのまま「王宮図書館」って書かれている。離れの建物全部が図書館らしい。
「広いですね」
「国中の書物が揃っております」
「そうなのですか」
当たり前の顔で返事したけど、めっっっちゃ驚いてるからね。
国中の書物揃ってるって何。何権限って思ったけど国の一番偉い人がいるんだから出来るか。すご過ぎ。そんな貴重な場所に入れるなんて感激しちゃう。
入館証とか必要なのでは? とか不安に思ったけど、王宮の人間以外入ると警報が鳴る結界が張られているから問題無いんだって。素晴らしいセキュリティ。魔法早く覚えたい!
「入口で待っておりますので、ご自由にどうぞ」
「有難う御座います」
そう言って、入口でぴたりとセリさんの動きが止まった。マネキンなのではと疑いたくなる程、セリさんは動かなかった。
そんな彼女に少しの恐怖を覚えながら、私は図書館の奥に進んだ。




