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帰還

「え、皇帝と皇后がお戻りになられるのですか!」


 数日後、トレーニングが終わったライン様からそんなことを聞かされた。ちなみに、ライン様、確実にシェイプアップしている。三キロ以上は落ちているね、これは。そろそろ周りも気付きだしそう。


 皇帝と皇后、つまりライン様のご両親は地方視察中で、実はまだ一度も会ったことがない。ということで、今回初めての謁見となる。


 どうしよう、こんな妃は駄目だとか言われたら。厳しい人かなぁ、顔も知らないから不安しかない。


 ロウ様の件もあるから、ああいう性格かもしれないと覚悟しておこう。もっと癖が強いかもしれない。前もって最悪の状況を予想しておけばショックは最小限で済む。


 二人が戻るのは数時間後らしい。試しに廊下を覗くと、メイドたちの慌ただしい会話が届いた。おお、いつもは全然人気が無いから珍しい。もしかしたら今まで静かだったのは皇帝たちが不在だったからかも。これからは賑やかになるのかな。


「あっ」


 廊下の奥でシーツを運ぶエルーダさん発見。今日もしっかり働いていてえらい。私も初めての謁見。失敗のないよう上品に行くぞ。


「あの、ライン様。私の今日のドレスはいかがで──」


 お会いするのに着替えた方がいいか聞こうと思って振り向いたら、ライン様がしゃがみ込んでいた。慌てて近寄ると、真っ青な顔で私を見上げた。


「どうしよう。父上と母上が私なんかに会って倒れやしないか不安になってきた」

「ライン様にそのような力はありませんから大丈夫です」


「しかし、こう醜い者が長男では申し訳なくて」

「自信持ってください。この十日余り、私と一緒に頑張ったライン様はとても素敵でしたよ。実際、効果も出ています。ほら」


 姿見をライン様に向ける。手を取って立ち上がらせると、初日よりすっきりした顔のライン様が映った。


「た、確かにすっきりした気も……」

「だいぶすっきりです。元々手足が長いですから、スタイルがとても良くなりましたね」


 瞳に僅かな光が宿った。やった、死んだ瞳が生き返った!

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