犯人候補とは
「では、もう一度触れてもいいか?」
「何度でも」
両手を差し出したら、おずおずと触れられた。片手ごとに繋がれて、なんか手遊び始めるみたいな感じ。進む速度はゆっくりだけど、出会ったばかりの私たちにはちょうどいいかもしれない。
「それで、何故メイドの恰好をしているんだ?」
それはもっともな質問。ライン様の評価を調べるためなんて口が裂けても言えない。
「普段あまり王宮で働く人たちとお会いすることがないので、どのように働かれているのかこっそり見学したくて。あ、セリさんには相談済です」
「なるほど。勉強熱心なんだな」
勉強熱心と言われて気まずくなってしまった。ライン様のことを思っての行動だけど、ライン様に頼まれたわけではなくて、結局自分がしたいってだけだから。
でも、どうにか良い方向に向かわせますので!
ピュアピュアライン様は満足したのか、私の話を聞いてすぐ帰っていった。その後すぐにセリさんが来て妃への着替えをしてくれた。
妃のドレスの方が動きづらいはずなのに、メイドから元に戻ってちょっとほっとした。いつもと違う恰好って結構疲れるものだな。
とりあえずメイド潜入はかなりの成果が出た。王宮の評価と王都の評価が違うとは思っていなかったから。王宮でも冷酷だと噂されて嫌われていると思ってたけど、疫病神レベルならまだ挽回の余地がありそう。多分。
あくまで私の予想にすぎないけど、王宮の方は普段のライン様の言動や態度でそう言われているだけな気がする。だから、ライン様自身が変わってくれれば彼らも歩み寄ってくれるはず。
問題は王都の方。きっと、誰かが故意に噂を流しているんだ。ライン様の評判が落ちて得をする人が犯人って考えるのが妥当かな。
うう~ん、第一皇子っていう立場的に、いなくなったら得する人だらけかもしれない。どうやって調べたらいいものか……。
あまりぽっと出の人間が怪しい動きするのはまずいか。もう少し王宮に溶け込んでから、というか、王宮にいて分かるものなのかな。




