みんなで食事
実際のやり方についても読み進めようと思ったら、もう一時間近く経っていた。そろそろ誰か呼びに来るかもしれない。
そう思っていたところにちょうどセリさんがやってきた。
「アリア様、お食事の時間で御座います」
これまた綺麗にお辞儀をされ、食事の間へと向かった。
分かっていたけど、広いなぁ。早く覚えないと、一人で廊下に出たら迷子になりそう。
「こちらで御座います」
これまた豪奢な扉を開けられる。想像通りの大きくて長いテーブルに、ライン様と離れたところに男性が座っていた。多分、ライン様の弟のロウ様だ。パパとママに第二皇子がいるって教えてもらったから。ロウ様が立ち上がる。
「アリア様、ロウと申します。本来であれば、王宮にいらっしゃった時にご挨拶せねばならなかったのに、遅れてしまい申し訳御座いません」
「いえ、こちらこそご挨拶に伺わず申し訳ありません」
ロウ様は黒髪のライン様とは違い、薄い茶髪のキラキラした皇子様だった。瞳も死んでないし、物腰も柔らかい。一般人が想像で皇子様を思い浮かべるときっとこんな──いやいやいや、ここの第一皇子はライン様だから! 私もアホアホ!
ロウ様が一歩近づいてこっそりと私に言う。
「兄は気難しいところがありますが、何かあれば私に言ってください」
「有難う御座います。ライン様には良くして頂いておりますが、何かあればその時はお伝えします」
「そうですか、それはよかった。それにしても、お美しい妃を迎えることが出来て、兄は本当に幸せ者です。これから宜しくお願い致します」
最後ににこりと微笑んでロウ様が席に着いた。
うわぁ、物腰全てが皇子様。そして、ずっと後ろでそわそわしているライン様、私からは全部見えてましたよ。なんか大きいわんちゃんみたいで可愛い!
私もライン様の向かいに座って昼食が始まる。席が三席しかないってことは、ロウ様はまだおひとりなんだ。まあ、弟ってことはまだ十代だからまだまだだよね。
皇帝と皇后は視察で地方都市を回っているらしいので、挨拶はしばらく後になりそう。
「ん、美味しい……」
やば、思わず声に出しちゃった。口元を押さえて控えめに笑っておく。
私は曲がりなりにも良いところから来た貴族なんだから、このくらいの食事で驚いていたらいけない。




