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美少女転生

「嘘やん」


 鏡に映った私は絶世の美少女だった。


「いや、絶対嘘やん」


 ツッコミを待ってみるけれども、誰もドッキリでしたって言ってくれる人はいない。だって部屋に一人だし。うちの実家のリビング三つ分くらいある部屋に。


「待って、ちょお待って」


 鏡の美少女に向かって言ってみる。鏡の美少女も手のひらをこちらに向けていた。やっぱこれ私やん。


 なんだろう、どうした? 私、どうした?


 病気かな、そういう。幻覚が見える的な。


 でも、多分これが現実な気がする。ううん、考えたくないけど、私に何か重大なことが起きて、この美少女に転生したとか。いやいや、でも、そうか。


「って、簡単に諦められるかぁい!」


 ついこの間大学四年になって、頑張って勉強してたし、就活も最終面接まで行ってたんですけど。友だちも、家族はパパだけだけど、大切な人がいっぱい。


「おったのにぃ……」


 泣きたくないのに涙が出る。泣いても美少女は美少女だ。不幸中の幸いなのは、転生した姿が美少女ってところかな。現実の私はどう転んでもメイクと服で誤魔化して雰囲気で何となく平均以上に見られる女くらいだったもん。


「まあ、なるようになるか」


 まだ一週間は引きずりそうだけど、ここでずっとしくしくしてもお腹が空くだけ。非効率的。


 まずは情報収集ね。ここが全くの異世界なのか私の知っているどこかの世界なのか。もしかしたら、異世界じゃなくて地球上の国かもしれない。それだったら日本に帰る手段がある。私じゃなくなったけど、私は私だから。


「あ、本や」


 ベッド横にある棚の上に本が一冊置かれていた。それを開くと手書きの文字──ってこれ、本じゃなくて日記だ。他人の日記を盗み見するのはよくない、って私のだからセーフか。


 多分、昨日までも私だったんだよね。時間が経てば思い出してくるのかな。


 そして文字を見た瞬間、私は本気で諦めざるを得なくなった。


 だってこれ、日本語じゃない。漢字でもないし、アルファベットでもない、タイ語でもない。他にも見慣れない文字を使う国はあるけど、二十一年の人生で一度も見たことがないから、異世界の可能性がとてつもなく高まった。


 でも、何故だか読める。今日までこの世界で生きてきたんだもんね。ありがとう、私。


 うう……それにしても、ラーメン、ピザ、ハンバーグ。人だけじゃなく、これからは大好きな料理にも会えないんだ。何を楽しみに生きていけばいいんだろう。


 いや、ハンバーグくらいならあるかな。無いならいっそ作ればいいのでは? 材料さえあれば、似たものは作れる。


 コンコン。


 その時、すぐ後ろでノックの音がした。


 体が震える。やばい、誰か来た。明らかに一人暮らしじゃなさそうな部屋の作りどから誰かしらいるのは分かってたけど、どうやって対応すればいいんだろう。


 昨日までの私は優しかった? 冷たかった? いや、さすがに家族相手に冷たいわないかな。知らんけど。


「はい」


 入ってこないので、もしかしたら私の返事待ちかもしれない。試しに返事をしてみたらドアが開いた。ビンゴ!


「アリア様。お早う御座います」


 うぅわ、想像の斜め上をさらに上昇しちゃった。


 家族じゃない、口調と恰好からしてメイドさんだこの人。


 私、メイドさんいるレベルのお嬢様なんだ。貴族? まさかの貴族です?


「お早う御座います」


 よく分からないので当たり障りのない返事をしてみる。すると、流れるように私の着替えから髪の毛のセットが始まった。恥ずかしいけど、恥ずかしがっている方がきっと恥ずかしいので当たり前の顔をしておく。


 すると、メイドさんが目に涙を溜め始めた。なんで!?


「申し訳ありません。もうすぐ嫁がれるのかと思うと悲しくなってしまって」

「いえ、大丈夫よ」


 全然大丈夫じゃないんだが~?

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