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即興短編

北欧温泉ヴァルハラ

神も凍え死んでしまいそうな冬があった。

雷神トールと最高神オーディンはすでに氷の像となっている。

薪に火を燃やしても風ですぐに消されてしまう。そんな異常とも言えるほどの冷風が北極から吹きつけ、北の大地を襲っていた。


「氷の女神の仕業だ」

軍神Tyr(トュール)はヴァルハラの神殿に勇者クー・フーリンを呼び出すと、命じた。

「悪神ロキが氷の女神スカディをそそのかして悪事を働かせているのだ。ロキを倒しに行くのだ」


クーは伝説の剣レーヴァテインを手に、旅に出た。


森を抜けるとオーディンとトールすら凍らせた風が四方から襲いかかったが、炎の剣で斬り裂いた。


凍りついた街に着くと、一人の老婆が近寄ってきた。


「ヒヒヒ。勇者さま。ロキを探しておられるので? ロキならさっき見ましたよ。あっちの丘の上にいました」


言われた丘の上に行ってみると、冷気を遮る木々も何もなく、凍りつかせる風が四方八方から彼を襲った。


しまった! 騙された! ロキは女にも化けるという……。さっきの老婆こそが悪神ロキだったのだ!


冷気の包囲から逃れる術はなかった。

悔しさのあまり勇者クー・フーリンは氷の大地に炎の剣を突き立てた。


割れた氷の大地の底からどばっと、温泉が湧き出した。


湧き出した温泉はみるみる氷を溶かし、岩盤のくぼみに溜まると、そこは楽園となった。


「はあ〜……」

勇者クーは剣を置いて湯に浸かり、至福の吐息を吐いた。

「もう戦いなどどうでもいい」


鹿や熊といった動物たちも温泉の匂いと温もりを嗅ぎつけてやって来ていた。


凍りついていたはずのオーディンとトールもいつの間にかそこにいた。

あったかいお湯を顔にかけると、トールが言う。

「温泉に浸かったら、神も人間も動物もないですな」


「悪神もないですよね」

いつの間にか一緒に湯に浸かっていたロキが言った。

「サウナもいいですが、広いお風呂は最高だ。温泉の中では皆、平等! 神も人間も動物も悪神も、正義も悪もないですな! ハッハッハ!」


「うんうん」

「そうだな」


勇者クー・フーリンも、オーディンもトールも、動物たちもにっこり頷き、仲良く温泉に浸かった。


温泉の中では誰もがまったりし、悪神ロキのいたずらを水に……否、かけ流し温泉のいい湯に流したのである。


ちゃん、ちゃん。




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― 新着の感想 ―
[一言] (*´ー`*)温泉行きたい…!
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