とある世界の御伽噺「猫姫様」
「むかしむかし、勇者さまが怖い怖い魔王を倒したときの、お姫様のおはなし
勇者様が王様に呼ばれて、倒しに行くまでの間、勇者様はお姫様と少しだけ会いました。
その時、お姫様が勇者様に言います。
『私は生まれながらにこの国のために嫁ぐことが決まっていた身。そして、貴方が魔王を討伐したらあなたの者になるでしょう』
と。
それに勇者様はこう答えます。
『俺の物?そうか。じゃあ、言うことを聞いてくれるってことかい?』
お姫様は、表情を変えずに頷きます。
『だったら、俺はお姫様には自由になってほしいな』
『自由、ですか?』
『あぁ。そうだ、ここに来る前の世界では、猫っていう動物が自由の象徴だったんだ。』
『猫、ですか』
『とてもかわいいんだぞ』
『はぁ・・・私には、自由も猫もわかりません。国のために嫁ぐのには不要だから。』
『まぁ、俺が魔王を討伐したら嫌でも知ることになるさ!』
その話をした次の日、勇者様は旅立ちました。
何日も何日も、王国の人々は魔物に怯えながら勇者様が魔王を倒すことを信じて待っていました。
そんな中、お姫様だけは、自由と猫について考えていました。
嫁ぐために生まれてきて、育てられたお姫様にとって、招来嫁ぐ相手が言っていたことは絶対だったのです。
なので、わからなかったことを次会う時までに理解していなければと思いました。
しかし、誰に自由について聞いても、皆行うべきことを行っているだけだ、との答えが返ってくるだけでした。
お姫様は次に猫について調べ始めました。
すると、東の方に猫と呼ばれる四足歩行の生物だけが暮らしている島が存在することを知りました。
存在だけは知られているものの、帰ってきた者はいないようです。
お姫様はどちらもわからず困ってしまいました。
お姫様が猫について調べている時、勇者様は魔王と戦っていました。
長い、長い間戦い続けた勇者様と魔王はどちらもボロボロです。
力尽きかけた勇者様が放った黄金の斬撃を魔王が漆黒の盾で受け止めようとしたとき、奇跡が起こりました。
どこからともなく四足歩行の動物が現れ、魔王の視界を塞いでしまったのです。
その結果、勇者様は魔王に勝つことができました。
魔王が倒れた瞬間、世界中の魔物が消え去り、平和が戻りました。
その後、少しの時間が経った後、勇者様はお城に戻ってきました。
王様は帰ってきた勇者様を歓迎するためのパーティーを開こうとしましたが勇者様は断り、お姫様に自由を、自身に帰還を望みました。
王様はそれを受け入れ、勇者様を元の世界に帰し、お姫様をお城から出し、お前はこの国から出ていけ!と言い放ちました。勇者様との約束を破るわけにはいかないけれど、お城に置いておくつもりはなかったのです。
もともと王様はお姫様だけを外に出すつもりでしたが、お姫様に仕える4人の執事たちは王様の命令を聞かず、お姫様についていきました。
お姫様と4人の旅は過酷でした。
何も知らない、何もできないお姫様を連れての旅は命がけです。
何度も何度も死にかけながら、いくつもの国々を超え、猫だけの島に最も近いと言われている港にたどり着きました。
何度も死にかけているうちに、お姫様が強くなってしまったのは、王家に流れる魔法に長けた血が成せる業だったのかもしれません。
いざ猫だけの島へと向かおうとしましたが、誰も船を出してくれません。
お姫様が困っていると、海の向こうから、小さな船と、それに乗った頭の上に黒い三角形の耳が生えていて、お尻から黒い尻尾が生えている女性が来ました。
そしてその女性はこういいます。
『私は黒猫にゃ。猫アイランドの主にして、猫を愛する者にゃ。迎えに来たにゃ。』
と。
お姫様たちは困惑しつつも、船に乗ると、お姫様たちにも三角系の耳と尻尾が生えて、猫だけの島で幸せに末永く暮らしましたとさ。
さぁ、お話は終わりだよ。もう寝なさい。」
「えぇ~!お母さん、僕、勇者様のおはなしが聞きたかったのに。なんでお姫様のおはなしなの?」
「それはね、猫姫さまのおはなしだけしか、勇者様が出て来るおはなしがないからだよ。」
「そうなの?」
「えぇ。他のおはなしはぜーんぶうそ。でも、このおはなしだけは本当なのよ」
「おかーさん、なんでそんなことしってるの?」
「・・・私のおかあさんのおかあさんの、もーっともーっとおかあさんからずーっと伝えられているからよ。」
「ふぅ~ん。それにしても、猫って、僕みたいだね!さんかくのおみみと、しっぽ!」
「・・・そうね。貴女はとってもよく似ているわ。」
「じゃあ、僕もお姫様みたいになれるかな?」
「猫姫様は、長い毛だったらしいわ。だから、ちょっと違うかもしれないわね」
「じゃあ僕、猫姫様を守るしつじさんになる!」
「執事さんは、男の人ばかりよ?」
「じゃーあ・・・くろねこさん?」
「そうね。真っ黒なお耳と尻尾は、黒猫さんみたいね。」
「ふわぁ・・・」
「おやすみ。・・・せめてこの娘だけでも、幸せに・・・」
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