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愛して、忘れて、また出会う  作者: 大木戸 いずみ
3/5

3 妖精

『私たちとはお話しているじゃない』


 妖精たちの声が聞こえる。

 神秘的で美しい妖精というよりかは、可愛らしく愛嬌のある妖精たちだ。羽があり、特に性別はない。ただ、一般的に男女で区別されているような気がする。 

 私は生まれてきた時からずっと妖精が見える。森を歩きながら私は妖精たちの言葉を聞いておく。


『ココの話し相手になってあげてるじゃない』

『そうだそうだ~~』


 貴方たちは人間じゃないでしょ、と心の中で呟く。

 私はあまり妖精と話したくない。なぜなら、私は魔女の中でも珍しく妖精にあまり好かれていない。

 極めて稀な現象だ。私の母親はとてつもなく妖精に愛されていた。鬱陶しいぐらいに精霊の寵愛を受け、妖精が慕っていた。

 それなのに私ときたら……。

 良い魔女は好かれているはずなんだけどね。どうやら私は良い魔女ではないらしい。


『ココのくせに僕らのこと無視してる~~』

『なんか喋ってよ』


 私の名前はココ。

 変な名前だよね。しかも魔女だから苗字はない。

 ……ただ、ココって名前は自分で名付けた。元々、母にココロという名前を付けてもらっていたけれど、私には似合わない。

 妖精にも愛されていなくて、一人ぼっりの私が、ココロなんて名乗れない。

 だから、名前を自ら変えた。

 

『ねぇ! なんか喋って!』

「何を?」

『あ、喋った~~!』 


 妖精は私のことは別に好きではないが、私が妖精を見ることが出来るから絡んでくる。

 それに、彼らは私のことを特別助けたりなどしないけど、私のことを虐めたりなどもしない。

 だから、上手く共存出来ているのだと思う。


 ……てか、私って昔から妖精に嫌われてたっけ?


『昔は皆、ココのこと大好きだったじゃん~~! 忘れたの~~?』


 妖精は人間の心の中が読める。

 私の心の声を聞いたのか、一人の妖精が私をじっと見つめながらそう言った。


「嘘、覚えてない」


 私の言葉に周りにいた妖精たちが一斉に『え~~~』と声を上げた。


「そんなに驚く!?」

『うん。びっくりだよ』

『私たちめっちゃココにべったりだったもんね~~』

『ね~~~!!』

 

 全く記憶がない。

 もしかして、誰かと間違えてない……? 私の母親とか。


『間違えているわけないじゃん』

「じゃあ、どうして今、私は妖精に嫌われてるの?」

『ん~~~、一人の男の子を魔法で傷つけたからだよ』


 その言葉に心臓がビクッと跳ねて、止まったような感覚になる。

 八年間ずっと考えてこなかった。一人の少年。

 私は自分のエゴで彼から自分の記憶を消して、もう二度と会わないようにした。

 その罪がそんなに重かったの? ……確かに魔法は人を助けるために使わなければならない。

 

「け、けど、彼は私のこと少しも思い出さないじゃない」

『それが酷なの~~!』

『なの~~!!』

「どうして?」

『生涯で最も好きだった女の子のこと思い出せないんだよ?』


 ……彼はそんなに私のことを好きだったの?


「これから先、私より素敵な女性に会うでしょ。……てか、もう会ってるかもしれないし」


 自分の声が少し震えるのが分かった。

 どうして今頃になって彼のことを思い出さなければならないの。

 私はその場を逃げるようにして、家へと戻った。妖精はそれ以上、私に追及してこなかった。


 ココを見送りながら、妖精たちは小さな声で話していた。


『ねぇ、ココにあの魔法について詳しく言わなくてもいいの?』

『当時のココはまだ未熟だったもんね~~』

『今は言わなくてもいいんじゃない。それに、王子様ともう会うこともないだろうし』

『…………それは分かんないけどね』

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