表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛して、忘れて、また出会う  作者: 大木戸 いずみ
2/5

2 八年後

 あれから八年が経った。もう十八歳。

 こうやって振り返ってみると、随分と早かった。八年なんてあっという間だ。

 この八年間、私は森からほとんど出なかった。私の存在を知る者は少ないだろう。

 別に魔女が忌避されているわけではないが、森から出るメリットが特になかった。……忌避されているわけではないが、魔女は嫌われている。

 私の母も…………。今は母の話は置いておこう。


「森から出なかったけど、色んな人にはあったな~~」


 私は独り言を呟きながら、家のカーテンを開ける。外の様子を伺う。誰もいないことを確認してから、マントを被り、家を出る。

 朝ごはんに使うキノコを探しに行く。

 ……私が探しているキノコって意外と見つからない貴重なものなんだよね。

 この森のことは端から端まで把握している。

 十八年間かけてやっと森の全てを知った。この世界に私よりもこの森に詳しい人間はいないと思っている。

 

 八年間で何が変わったのか、と聞かれても内面的な部分で言えばすぐには出てこない。

 ただ、外見は結構変わった。

 淡い青空色のふわふわとした髪は腰ぐらいまで伸び、身長はあまり著しく成長はしなかったが、顔は少しは大人っぽくなったと思う。

 クリッとした丸いアーモンド色の瞳は昔と変わらない。

 もう少しだけ十八歳らしい大人の雰囲気がほしい。色気のある魔女になりたい。


「あ、見っけ!」

 

 私は緑色のキノコに手を伸ばす。

 本来なら誰も食べようなんて思わなそうな見た目をしている。……が、これは決して毒キノコなどではない。

 ちゃんと食用キノコだ。スープに使用するのが一番美味しい食べ方だ。

 それなのに、ほとんどの人は食べたがらない。普通とは少し違うだけで警戒する。

 私の髪の毛もそうだ。青色の髪なんて森以外の場所では浮いてしまう。

 マントなしでは絶対に森の外へ出かけることなんて出来ない。

 ……あ、でも、黒く塗ればいいのか。


 街へ出ることも考えたこともあったが、結局森が安全で安心する場所だから、一度も出たことはない。

 やっぱりどこか躊躇ってしまう。私は意外と臆病なのかもしれない。


「二十歳までには街へ出てみたい」


 小さな目標を掲げる。

 私はこの八年間、人と会話していない。……何人と会話をしただろう。  

 ……八人ぐらいかな? 


「意外と会話してるかも」


 一年に一人のペースって考えれば、悪くない。

 森に訪れて、たまたま遭遇した人と話すぐらいだ。そのうち三人とはとても仲良くなった。

 私が魔女だと分かっていても、私の存在を他言しなかった人たち。

 とても信用できる人間だ。彼らの為に魔法で薬を作ったりしている。私の魔法薬はとても効くみたいだ。

 ……この国の医療機関の大きな支えとなっているぐらい、私の薬は役に立っている。

 その事実が、私が唯一持てる誇りだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ