クズにはクズの生き方がある。
クズは今日も生きる
ただ欲望の赴くままに。
「おいおい、ここはお前みたいな雑魚が来る場所じゃねぇんだよ。さっさとその可愛い子置いて帰ってママの乳でもしゃぶってろゴミカス野郎が」
そう言い放った強面の男
身長は軽く2メートルはあるだろうか。熊と見間違うほどの筋肉を合わせもち、その威圧感は並の冒険者では気絶してしまうほど。そして、弱そうな女連れの男を見かけるなり喧嘩を売る腐りきった心の持ち主。
そう、我らが主人公だ。
この冒険者ギルド「ビースト」は彼の縄張りである。
絶賛咬ませ犬ムーブをかましまくっている彼はその端正な顔を歪ませて言った。
「おい、嬢ちゃん。俺と遊ぼうぜ。天国って知ってるか?今夜俺が連れてってやるよ。
そこのポークピッツには無理だろうがな。」
「ギャハハハ!」
品のない笑い声がギルドに溢れかえった。
どうやら、彼の言葉は同ランクのクズ共にとって最高の言葉だったらしい。
さて、言われっぱなしだった可哀想な彼らが言う。
「やれやれ、実力差も理解できないのか
リル、下がってて。僕がこいつを懲らしめてやるからさ。」
「うん。やりすぎないであげてね!」
なかなかに強気である。おそらくチート持ち転生者であろう。流れ的に、我らが主人公はおそらくここで負けるのだろう。
予想通り、その言葉は彼の逆鱗に触れたようだ。
彼は思い切り胸ぐらを掴み、威圧感全開で脅す。
「殺すぞゴラ」
しかし、その咆哮はチクッとした痛みを転生者に与えるに留まった。
「やれやれ、こんなところで血を見せたくはないんだけどね。まぁ、ボコボコにするだけで許してあげるよ。」
なんとまぁムカつく転生者である。しかし、我らがゴミカス主人公には妥当な態度だろう。
ゴミカスが動くと同時に、彼は与えられたチート能力を発動させる。
「時間遅延」
彼が呟くと同時に、世界は彼ただ1人を除いて遅くなる。しかし、彼はある異変に気づく
(身体に力が入らない…?)
体がまるで麻痺しているかのように動かない。
原因はもちろんあのクズにある。
クズは意外と用意周到らしく、胸ぐらを掴んだ際に、仕込み針で彼に毒を打ち込んでいたのだ。
救いようのない卑怯なクズである。
当然そんな状態で巨漢にダメージを入れれるはずがない
時間遅延も終わった。もはや彼に打つ手はない
ボスッ
軽い音と共に、彼の拳はクズの胸板で軽く受け止められる。
ギャハハハハハ!
ギルドのクズ共も大満足だ。彼は屈辱で真っ赤になって震えている様だが、誇っていい。
どんなコメディアンでも、こんな爆笑は滅多に起こせないだろう。
ベストオブクズこと、我らが主人公は白々しく言い放つ
「これが全力か?そよ風でも吹いたのかと思ったぜ」
当然、ギルドは大盛り上がり。
本当に楽しそうなクズ共である。少し羨ましいくらいだ。
「黙れ!お前が僕にひきょu」
何か言おうとした雑魚に、クズは容赦なく殴りかかる。
女の子と見間違われるような、可愛らしい顔をクリーチャーへと変えていく。
心底楽しいのだろう。周りのクズ共と一緒に大笑いしながら、拳を振るう。
20分ほど経っただろうか。
「ごべんなざぃ。僕が悪かっだでず。」
泣きながら許しを請う、完全に心の折れた彼の姿に
巨漢クズは満足感を覚え、さらに行為をエスカレートさせていく。
身ぐるみを全て剥ぎ、装備を売り払い、連れのリナとか言う美少女を襲う。
そして、ボロ雑巾と化した転生者をギルドの外に投げ捨て、問う。
「いいスキル持ってんじゃん。俺にくれよ。」
もちろん彼に拒否権はない。
「はい、さじあげまず。ゆるじでぐださい」
手に入れたスキルと共にクズはニッコリ笑い、
「ありがとな。じゃあな」
珍しく感謝の言葉を述べ自慢の怪力で、彼の首をへし折った。
死体は仲間のクズに処理をまかせ、主人公はギルドの奥で酒を嗜む。新たなスキルに酔いながら。
これは我らが主人公ことギールの冒険章である。