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お題シリーズ3

人間に成り代わった影

作者: 仲仁へび



 強い光があたって、影が薄くなる。


 そこは光の強い場所だったから。


 罪びと達が表を歩けないように、いつも明るくしている場所だったから。


 罪びとだけでなく、暗いものまで存在できなくなってしまった。


 影は、光が強い場所では存在できない。


 それは影が影だからである。


 本体がないと、存在できないからである。


 本体が光に当たる事で、影はうまれるのだから。


 本体が光に当たり、光のあたらぬ場所が発生する事で、影がうまれるのだから。


 だから影は、まんべんなく光の強い場所では存在できない。


 本体があらゆる角度から光で照られされたのなら、存在できなくなってしまう。


 影はその事態を恐れていた。


 いつ本体がその場所にいってしまうのか、気が気ではなかった。


 影は一度消えたら、次に出現する影は別の影になる。


 同じ思考、同じ感情を持つとしても、一度一つの影は死んでしまう。


 どんなに同じに見えても違うから、そこにいる影は唯一無二の影だった。


 思いつめた影は、いっそのこと、自分から消えられたらいいのにと考えた事があった。


 けれど、自分では行動できないから。


 影はどうやっても、自分で消える事ができないから。


 存在の出現と消失を本体に任せる事しかできない。


 大切な事を自分で決める事ができない。


 だから影の不安はとても大きくなった。


 自分で自分の事を決められるものたちがとても羨ましいと妬み、憎むようになった。


 そうしたら、影の色は濃くなり、強くなっていった。


 そうすると、普段できない事がだんだんできるようになってきた。


 本体の行動に反して、少しだけ自分で動けるようになった。


 やがて影は本体と入れ替わろうと考える。


 幸運にもその方法があったからだ。


 調べる事ができたからだ。


 影は長い時間をかけて入念な準備行った。


 そして、ついにその日がやってきて、とある方法を行った影は本体と入れ替わった。


 影は喜んだ。


 これで消失におびえる苦しみから解放されたと。


 しかし。


 影は本体としての生き方を知らなかったから、本体として生きられなかった。


 影は他の多くの本体たちから異物として、排斥されてしまった。



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