31 撫子の一本背負い
「ぐへぇっ⁉」
強烈な一撃をお見舞いされた色雄は、そのまま床につんのめった。
そして殴られた後頭部を押さえながら上半身を起こし、撫子に向かって声を荒げた。
「何すんだよいきなり⁉人の頭を背後から殴るなんて非常識すぎるだろ!」
すると撫子も怯まず言い返す。
「非常識なのはあんたの方でしょうが!
大体あんた、静香がどうして女性恐怖症になったのか分かってないでしょ!」
「分かってるよ!静香が小さい頃から周りの女子達にいじめられてたからだろ!」
「やっぱり分かってないじゃないの!この馬鹿!」
「人を馬鹿馬鹿言うな!
じゃあお前はどうして静香が女性恐怖症になったのかが分かるのか⁉」
「当たり前じゃないの!
静香はね、あんたがシスコンだからこんな風になっちゃったのよ!」
「ええっ⁉嘘ぉっ⁉」
「何を『それだけは無いと思ってたぜ!』みたいな顔してんのよ!
誰が聞いても分かるわよ!
あんたが普段から静香にベッタリくっついてたから、
あんたに片思いをしてた女子どもが静香に恨みを持ったんじゃないの!」
「そ、そんな、俺はただ、静香の事を大事にしていただけなのに・・・・・・」
「あんたが大事にしてたのは自分のシスコン体質でしょ!
そのせいで静香はずっと苦しんでたのよ!」
「う、うるさい!静香の事を一番理解しているのはこの俺だ!
これからも俺が静香の事を守るんだぁっ!」
色雄はそう叫ぶと、ガバッと撫子に掴みかかった!
「お姉ちゃん!」
ピンチの姉を助けようと、紳士クンはそう叫んで立ち上がった。が、次の瞬間、
「うぉおりゃあぁっ!」
と叫び声を上げた撫子がクルリと身を反転させ、色雄に見事な一本背負いをお見舞いした!




