29 女性恐怖症になった一言
「まあ、それだけならまだよかったんですが、
やがて兄は、彼女とのデートにも私を一緒に連れて行くようになったんです」
「えええっ⁉それは流石にマズイんじゃないですか⁉」
「はい。なので私も極力兄と距離を置くよう努力しました。
すると兄は余計に私にベタベタするようになって、
兄の彼女もまた、私を疎ましく思うようになりました」
「それは、でも、静香さんが悪いんじゃないですよね?」
「ですが彼女からすると、私は彼氏を奪い取った悪女にしか見えなかったようです。
そしてある日、彼女は校舎裏に私を呼び出し、面と向かって私にこう言いました。
『あんたが居ると、色雄を好きになった女子が皆不幸になる。
だから、死んで』
と。
そう言われた時、私は女の子と仲良くなるのは、
一生不可能なんだと思い知らされました。
そしてその時以来、私は本格的に女性恐怖症になってしまったんです・・・・・・」
「そう、だったんですか。
だから針須さんとも、あんな事になってしまったんですね」
「針須さんには本当にひどい事をしてしまいました。
今でも夢に見る程申し訳ないと思っています。
でも私、本当に女性が怖いんです。もう、どうしたらいいのか・・・・・・」
静香はそこまで言うと、両手で顔を覆って泣き出してしまった。
「静香さん・・・・・・」
そう呟き、キュッと唇を噛む紳士クン。
今の静香にどういう言葉をかければいいのか、全く分からなかった。
(こんな時に静香さんのお母さんが居てくれたら、
きっと静香さんをうまくなぐさめてくれるんだろうけど・・・・・・)
静香が女性恐怖症になった原因は分かったが、それを解決する方法は分からない。
(一体どうすれば、どうすればいいんだ?)
そう思いながら途方に暮れる紳士クン。
もはや静香を女性恐怖症から立ち直らせる手立てはないのだろうか?
と、思われたその時だった。




