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紳士クンの、割と不本意な日々Ⅱ  作者: 椎家 友妻
第四話 紳士クンと彼女のお悩み
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24 正面玄関から堂々と入った場合は、不法侵入は適応されない説

 そしてドアをバタンと閉めた撫子は、家の雰囲気をうかがいながら言った。

 「どうやら他の家族は居ないみたいね。好都合だわ」

 「お姉ちゃん、これって不法侵入だよね?」

 「大丈夫よ。正面玄関から堂々と入った場合は、不法侵入は適応されないから」

 泥棒もビックリの理屈を展開させながら、撫子は靴を脱いで廊下に上がった。

 「さ、遠慮せずに上がって」

 いや、ここはお姉ちゃんの家じゃないでしょ、

と突っ込むのももはや無駄な気がするので、紳士クンも靴を脱いで

 「お、おじゃまします」

 と呟きながら廊下に上がった。

 「ここね」

 二階にやって来た撫子と紳士クンは、

『Shizuka』と書かれたプレートがかかった部屋の前に立った。

そして撫子は紳士クンの肩にポンと手を置いてこう言った。

 「じゃあ乙子、頼んだわよ」

 「え?ええっ⁉そうなの⁉」

 「当たり前じゃないの。ただでさえ今の静香さんは、

私達が勝手に家に上がりこんできて怯えているのよ?」

 「あ、一応勝手に上がり込んだっていう自覚はあるんだね」

 「まあね。で、そんな所に私が現れたら、

静香さんは失神とかしちゃいそうじゃない?

だからここはあんた一人で部屋に入って、色々話を聞き出しなさい」

 「う~ん、本当にいいのかなぁ?」

 「いいの!これは静香さんの為なんだから、自信持ってやりなさい!」

 「わ、分かったよ。ボク、やってみる」

 紳士クンがそう言って頷くと、

撫子は「よし」と言って紳士クンの両肩を掴み、

一転してドスを利かせた声になってこう続けた。

 「ただし、密室で二人きりになったからって、

静香さんに変な事しようとしたら承知しないからね?

その時はあんたの息の根を止めるわよ?」

 「そ、そんな事しないよ!する訳ないじゃないか!」

 紳士クンは必死にそう訴えると、撫子はニコッと笑って言った。

 「冗談よ冗談。あんたはそんな事はしないわよね。

じゃ、私はこっちの部屋で昼寝でもしてるから、

話が終わったら起こしに来てね」

 そして撫子は隣の部屋に足を踏み入れ、

床に置いてあったクッションを枕にしてゴロンと横になった。

 「お姉ちゃん・・・・・・」

 無茶な事をやるだけやって、最後は弟に丸投げという姉の傍若無人(ぼうじゃくぶじん)ぶりに、

紳士クンは深いため息をついた。

が、すぐに気を取り直し、静香の部屋の前に立った。

そしてにわかに震える右手で、目の前のドアをコンコンとノックした。



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