23 突き進む撫子
「お、お姉ちゃん⁉勝手に入っちゃ駄目だよ!」
紳士クンはそう言って止めようとするが、撫子は構わずに玄関のドアノブに手をかけた。
そしてそれを回そうとしたが、鍵がかかっているので回らなかった。
「何よ、鍵がかかってるじゃないの」
不服そうに呟く撫子。
そんな撫子の背後に歩み寄った紳士クンは、何とか姉を止めようと言葉をかける。
「お姉ちゃん駄目だって。
いくら静香さんがこの中に居るからって、勝手に入ろうとするのは駄目だよ」
しかし撫子は聞く耳を持たない様子で自分の足元をキョロキョロ見回し、
玄関の近くに置かれた植木鉢を見つけると、その傍らにしゃがみこんだ。
「お姉ちゃん?どうしたの?」
そう言って紳士クンが疑問に思っていると、
撫子は目の前の植木鉢をひょいと持ち上げた。
するとその下から、キーホルダーも何も付いていない鍵が出てきた。
そしてそれを拾い上げた撫子は、紳士クンに差し出してこう言った。
「はい、開けて」
「え?えええっ⁉そ、それってこの家の合鍵じゃないの⁉」
「多分そうよ。だからこれでその玄関の鍵を開けてって言ってるのよ」
「だ、だってそんなの犯罪じゃないか!」
「大丈夫だって」
取り乱す紳士クンに撫子は軽い口調で言い、立ち上がって自分で玄関の鍵を開けた。
そしてドアが開くと、撫子は何のちゅうちょもなく家の中に足を踏み入れた。
「お、お姉ちゃん!駄目だって!」
悲鳴にも近い声を上げる紳士クン。
撫子はそんな紳士クンの腕を掴み、グイッと家の中に引き入れながらこう言った。
「ホラ、さっさとあんたも入りなさい。
そんな所でギャーギャー騒いでたら、近所の人に怪しまれるでしょうが」




