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22 彼女は、居る
「留守、かな?」
首をかしげる紳士クン。
しかし撫子は納得しない表情で言った。
「きっと居留守よ」
「そ、そうかな?」
「そうに決まってるわ。
今頃二階の部屋の窓から、私達の事をこっそり覗いてるに違いないわ」
と言いながら、撫子は不意に二階の窓を見やった。
するとその窓に人影があり、撫子の視線に気づいた人影は、
慌ててカーテンの陰に隠れた。
そしてそれを見た撫子は、ニヤリと笑って呟いた。
「やっぱりね」
「え?何が?」
目を丸くして尋ねる紳士クン。
すると撫子は、
「やっぱり居留守だったのよ」
と答え、門を開けて中に入った。




