5 紳士クン争奪戦
「どこがですか!そんな事が許される訳ないでしょ!
もしそんな事が許されるなら、私が乙子さんとメイド同士になります!」
「はぁ⁉何言うてんねん!このアイディアを考えたのはウチやで⁉
そやからウチが乙子ちゃんとペアを組むのが筋やろ!」
「それはあなたが勝手に決めた事でしょ!
仲良しの度合いから言って、私が乙子さんとペアを組むのが妥当です!」
「アホ言いな!ウチの方が乙子ちゃんと仲良しやもん!
そやから乙子ちゃんとペアを組むのはウチ!」
「いいえ!私です!」
「ウチ!」
「私!」
「あ、あの、二人とも落ち着いて・・・・・・」
思わぬ形で始まってしまった笑美と華子の口論の間に、
紳士クンがおずおずと口を挟んだ。
すると二人は同時に紳士クンの方に振り向き、口々にこう言った。
「乙子ちゃんはウチとペアを組みたいやんな⁉な⁉」
「乙子さんがペアを組みたいのは私ですよね⁉ね⁉」
「え、え~と・・・・・・」
二人の凄い剣幕に、紳士クンは苦笑しながらたじろいだ。
(ど、どうしよう、まさかこんな事になるなんて・・・・・・)
この状況を小粋なジョークでかわせるほど、今の紳士クンには余裕も経験値もない。
おまけに根が優しいものだから、
何とか二人を傷つけないような答えを必死に考えた。
が、そんな都合のいい答えが思い浮かぶはずもなく、
紳士クンはひたすら焦る事しかできなかった。
(ど、どうしよう・・・・・・)
その間にも笑美と華子はズズイッと詰め寄って来て、
紳士クンに無言のプレッシャーをかけてくる。
このままだと紳士クンは、
たじろぐあまりに椅子ごと後ろにすっ転んでしまいそうだった。
紳士クンピンチ!
どうする紳士クン⁉
と、思われたその時だった。
「お、ここに居たのか乙子」
という声とともに、背後から生徒会副会長の鎌井太刀が現れた。