14 お兄ちゃん
という声とともに、一人の人物が校舎の方からやって来た。
ちなみにその人物は黒のブレザーを着たエシオニア学園の男子生徒で、
目元は涼しげで顔立ちは整い、爽やかな雰囲気を醸し出していた。
そしてその男子生徒を見た静香は、目を丸くして声を上げた。
「あ、お兄ちゃん」
「へ?」
「お兄ちゃん?」
静香の言葉に、同じように目を丸くする撫子と紳士クン。
そんな中その男子生徒は静香の元までやって来て言った。
「校門で待ってたのになかなか来ねぇから探しに来てみれば、
お前、この学園に来てからもいじめられてる(、、、、、、、、、、、、、、、、、)のか⁉」
(え?それってどういう・・・・・・)
男子生徒の言葉に紳士クンは引っかかった。
すると別の意味で引っかかった様子の撫子が、男子生徒をビシッと指差して言った。
「ちょっとあんた!人聞きの悪い事を言わないでくれる⁉
私達は別に彼女をいじめていた訳じゃないわ!ていうかあんたはどちら様⁉」
すると男子生徒はファサッと長い前髪をかき上げて言った。
「俺はエシオニア学園男子部二年の迚摸色雄。
ここに居る静香の双子の兄だ!妹をいじめる奴はこの俺が許さないぞ!」
(そういえば静香さんは、お兄さんが三人居るって言ってたなぁ)
紳士クンがそう思っていると、撫子が再び静香の兄、色雄に食ってかかった。
「だからいじめてる訳じゃないって言ってるでしょ!
私達はむしろ彼女に協力してあげてたのよ!」
「何?協力?」
そう言って眉をひそめる色雄。
そこに静香がおずおずと口を挟んだ。
「お兄ちゃん、その人が言っている事は本当よ。
こちらは私のクラスメイトの蓋垣撫子さんと、おと───妹の乙子さん。
この人達は、私の女性恐怖症を治す為に協力してくれていたの」
「そ、そうだったのか。それは失礼な事を言って悪かった。この通り」
静香の言葉を聞いた色雄は、そう言って撫子達に頭を下げた。
すると撫子は腕組みをしながらプイッとそっぽを向いて言った。
「フン、分かればいいのよ」
「あの、ところで、さっき色雄さんが言っていた
『この学園に来てからも』っていうのはどういう事ですか?
もしかして、中学の時にも静香さんは・・・・・・」
紳士クンがおずおずとした口調で尋ねると、色雄は軽い口調で
「ああ、実はね──────」
と言おうとしたが、傍らの静香がそれを遮るように口を挟んだ。
「やめて!その話はしないで!」




