4 誰にカードを渡そうか
「う~ん・・・・・・」
その日の昼休み、
紳士クンは自分の机に置いた給仕カードを眺め、腕組みをしながら悩んでいた。
その悩みの種はこれだった。
(このカード、誰に渡そう?)
今朝紳士クンは令から猛烈なメイドアプローチを受けたが、
四日間付きっきりで令のお世話をするとなると、ちょっとキツイものがあった。
令には女装した可愛い男の子が好きというかなり困った性癖があるので、
そんな令に紳士クンがメイドの姿で四日間もお世話するとなれば、
どんな目にあわされるか分かったものではない。
なので令に給仕カードを渡すのだけは、どうしても避けたいところであった。
かといって姉の撫子のメイドになるのも、それはそれで色々コキ使われそうなので、
できれば遠慮したいところだ。
(ここはやっぱり、先生に選んでもらう方がいいかなぁ)
と、思ったその時だった。
クラスメイトの樫増笑美が、
いつもの元気な笑顔を浮かべながら紳士クンに話しかけてきた。
「ヤッホー乙子ちゃん。どのお姉様にカードを渡すかもう決めた?」
「いやあ、それがまだ決まらなくて・・・・・・」
紳士クンが苦笑しながらそう言うと、背後から戸入野華子が現れて口を挟んだ。
「あら、乙子さんは凄茎会長にお仕えするんじゃないんですか?」
「う~ん、ボクなんかが令お姉様のメイドっていうのは、
何か釣り合わない気がするから、誰か違う人にしようかと思うんだ」
「まあ確かに、会長さんのメイドとなると競争率が高そうやもんなぁ。
ならいっそ、ウチのメイドになる?」
「ええ?笑美さんの?」
笑美の言葉に目を丸くする紳士クン。
すると華子がたしなめるような口調で笑美に言った。
「何を馬鹿な事を言ってるんですか。
あなたも誰かにメイドとしてお仕えしなくちゃいけないのに」
「だからぁ、ウチも乙子ちゃんのメイドさんになるねん。
で、お互い仲良くメイドさんとしてお世話し合うんよ♪これなら問題ないやろ?」