10 助っ人登場
──────そこから約十分後、紳士クンと静香が居る旧校舎の前に、
もう一人の人物がやって来た。
紳士クンの姉にして静香のクラスメイトの撫子である。
さっき紳士クンが携帯電話で呼び出したのだ。
「お姉ちゃーん!こっちこっち!」
校舎の方から現れた撫子に、紳士クンはそう言って手を振った。
そして誰が来るのかを知らされていなかった静香は、
撫子の姿を見るなり紳士クンの背後に隠れた。
「ど、どうして撫子さんを呼び出したんですか?」
「もちろん、静香さんの特訓のためですよ」
震える声で問いかける静香に軽い口調で答える紳士クン。
そこに撫子が歩いてやって来た。
「何なのよ乙子、こんな所に呼び出して。
っていうかあんたの後ろに隠れてるの、誰?」
撫子が眉をひそめながらそう言うと、静香の体がビクッとなった。
すると紳士クンはサッと横に移動し、静香の姿を撫子に見せながら言った。
「お姉ちゃんのクラスメイトの、迚摸静香さんだよ」
「え?静香さん?何であんたと静香さんが一緒に居るのよ?」
目を丸くする撫子に、紳士クンはこれまでのいきさつを簡単に説明した。
静香は実は極度の女性恐怖症で、クラスの女子達とうまくなじめない事。
そしてそれが原因で、この前の特別授業でちょっとしたいさかいが起きてしまった事。
なのでそれを解決する為に、静香の女性恐怖症を何とかしようとしている事。
それらの説明を一通り聞いた撫子は、腕組みをしながら言った。
「なるほど、大体事情は分かったわ。
要するに静香さんは極度の女性恐怖症で、
それを治す為に私に協力しろと、そういう訳ね?」
「うん、そういう事なんだ。協力して、くれるかな?」
紳士クンがおずおずと尋ねると、撫子は目を細めながら答えた。
「それは別に構わないけど、ひとつ聞きたい事があるわ」
「え?何?」




