6 とりあえず紳士クン一人で
その日の放課後。
紳士クンは一緒に帰ろうと言う笑美と華子の誘いを断り、
例の彼女が居る、一年女郎花組の教室の前までやって来た。
ちなみにここに静香の姿はない。
静香をここまで連れて来るのは色んな意味で骨が折れそうなので、
まず紳士クンが例の彼女と接触し、静香の元へ連れて行こうと考えたのだ。
静香からの情報によると、彼女の名前は針須尚といい、
素直で大人しい、とても人柄のいい生徒らしかった。
(そんなにいい子なら、静香さんともすぐに仲直りできるよね)
紳士クンは気楽にそう考えながら教室の中を覗き込み、
近くに居たボブヘアーの女子生徒に声をかけた。
「あのぉすみません。
このクラスに、針須尚さんという方はいらっしゃいますか?」
するとボブヘアーの女子生徒は紳士クンの方に振り返り、張りのある声で言った。
「確かに尚はこのクラスだけど、あなたは?」
「あ、ボクは、一年菫組の、蓋垣乙子といいます。
ちょっと針須さんに、お話があって来ました」
「ああ、思いだした。
あなた入学式の時、教会の後ろの方で副会長達とモメてた人でしょう?」
「うっ、それはできれば、忘れて欲しいんですけど・・・・・・」
「私じゃなくても皆覚えてるわよ。あなたは一年の間じゃ結構有名人だから」
「ええっ?嫌だなぁ・・・・・・」
「そう?別にいいんじゃないの?で、何だっけ?」
「あの、針須さんに会いに来たんですけど」
「ああ、そうだったわね」
「今、いらっしゃいますか?」
「居ないわよ」




