4 以前の特別授業のクダリ
さっきも記したが、静香は極度に女性と接するのが苦手である。
だから下級生の女子生徒と四日間一緒に過ごさなければならなかったあの特別授業は、
静香にとっては相当過酷なものだったのだろう。
なので紳士クンは優しい口調で静香に言った。
「それは確かに静香さんにとって大変な事でしたね。
ご家族の方も心配されたんじゃないですか?」
すると静香は首を横に振ってこう続けた。
「私の父や兄は、心配するどころか逆に変な気を使って、
その四日間は家を留守にしたんです。
その方がその女子生徒との距離も縮まるだろうって。
でもそれは私と彼女の距離を、一層遠ざける仕打ちでしかありませんでした」
「あ~、まあ確かに、苦手な人と二人きりで生活させられたら、
余計に溝が深まりそうですもんねぇ。
じゃあやっぱり、メイドとしてお世話をしてくれた下級生とは、
仲良くなれなかったんですか?」
「はい・・・・・・」
そう言ってしょんぼりする静香。
(う~ん、大体事情は分かったけど、
それにしても静香さんのこの落ち込みようはひどいなぁ。
もしかして、他にも何かあったのかな?)
そう思った紳士クンは、続けて静香に問いかけた。
「あのぉ、もしかしてそれ以外にも何かあったんですか?
例えばその下級生の子に、何か嫌な事を言われたとか、されたとか」
すると静香は首を横に振り、ひと際強い口調でこう言った。
「いいえ!そんな事は一切ありません!
彼女はとても心の綺麗な方で、一生懸命私のお世話をしてくださいました!」
「そ、そうなんですか。
じゃあどうして静香さんは、そんなに落ち込んでいるんですか?」
「私、そんな彼女とキチンと向き合う事ができなかったんです。
緊張するあまり、彼女とはまともに話もできなかったし、
食事を用意してくれても、一緒に食べる事ができなかった。
その他にも彼女は私に色々親切にしてくれたんですが、
そんな彼女でも、私は心を開く事が出来なかった。
そして特別授業の最終日には、とうとう彼女を泣かせてしまいまして・・・・・・」
「えっ?静香さんがその子に何か言ったんですか?」
「いいえ。逆にその子に
『静香お姉様が満足できるようなお世話ができず、
本当に申し訳ありませんでした』
と、謝られてしまいました。
彼女は私があんなに冷たい態度をとったのは、
全て自分のせいだと思い込んでしまったのです」
「とても、真面目な性格の子だったんですね」
「そうなんです。それなのに私はあんなにひどい事を・・・・・・」
静香はそこまで言うと、両手で目元を覆って泣き出してしまった。




