21 男らしさは見せられた
「え、笑美さんはどんな人がタイプなの?」
「ウチ?そうやなぁ、一緒に居ると楽しくて、いざという時ウチを守ってくれる人かな?」
笑美はそう言うと、紳士クンにクルッと背を向けてこう続けた。
「あ~あ、乙子ちゃんが男の子やったらよかったのになぁ」
「ええっ⁉そ、それってどういう・・・・・・」
笑美の言葉に驚きの声を上げる紳士クン。
すると笑美は紳士クンの方に向き直って言った。
「さっきウチを助けてくれた時の乙子ちゃん、何か凄くカッコ良かったんやもん。
女の子にこんな事言うのは失礼かもしらんけど、ちょっと男らしかったで」
「笑美、さん・・・・・・」
「ゴメンね変な事言うて。じゃ、帰ろっか」
笑美はぺロっと舌を出してそう言うと、踵を返して歩き出した。
その後ろ姿を眺めながら、紳士クンは暫くその場にボーっと立ち尽くしていた。
『ちょっと男らしかったで』
さっきの笑美の言葉が、紳士クンの頭の中をグルグルと回っている。
これまでそんな事をほとんど言われた事がなかった紳士クンは、
何とも言えない高揚感に包まれていた。
「乙子ちゃーん?どうしたーん?」
そんな紳士クンに気づいた笑美が、振り返って手を振る。
そしてハッと我に返った紳士クンは、
「あ、ゴメン。今行くよ~」
と言い、笑美の元へ走り出した。
今日は紳士クンにとってとても疲れる一日だったが、
その分とても思い出深い一日となった。
こうして紳士クンは、男らしい男への階段をまた一段上ったのであった。
まあそれと同時に女の子らしさの階段も三段くらい上ってしまっているが、
そんな事を気にしてはいけない。
紳士クンの男らしさへの挑戦は、まだまだ続く!




