16 これは恋か友情か
すると紳士クンはうっかり笑美の事を『好き』と言ってしまった事に気づき、
わたわたと取り乱しながら弁明した。
「あ!いや!今言った好きはあくまで友達としてで、
決して特別な意味じゃあ──────」
と、紳士クンがその言葉を言い終えるより先に、笑美が紳士クンにガバッと抱きついた。
「ええっ⁉え、笑美さん⁉」
更に取り乱す紳士クン。
すると笑美は紳士クンに抱きついたままこう言った。
「ありがとう乙子ちゃん。ウチも乙子ちゃんの事、大好き」
「えーっ⁉」
笑美の衝撃の告白に、紳士クンはパニックに陥った。
(え、笑美さんもボクの事が好き⁉という事は両思い⁉
いやいや違う違う!ボクが笑美さんを好きなのはあくまで友達としてで、
だけど笑美さんみたいに素敵な子に好きって言ってもらえるのは凄く嬉しいし、
うわあああっ!)
紳士クンの心臓の鼓動はピークに達しようとしていた。
しかしそのドキドキ感は、
さっきのランジェーリーショップでのドキドキ感とは明らかに違っていた。
ランジェーリーショップの時は緊張と興奮が混ざり合ったドキドキ感だったが、
今のドキドキ感は何だかとても切なく、胸がしめつけられるようなものだった。
しかしこれが恋愛感情なのかどうなのか、今の紳士クンには判断する事ができなかった。
そんな中紳士クンの鼓動は更に高まっていく!
するとそんな紳士クンに、笑美が次に言った言葉はこれだった!
「これからもずっと、ウチとお友達(、、、)で居てね」
「へ?」
笑美の言葉に、思わず頓狂な声を上げる紳士クン。
そして紳士クンはここで、今自分が置かれている状況に気が付いた。
(そうだ、今のボクは、女の子だったんだ・・・・・・)
そう、今の紳士クンは設定上は女の子。
そして笑美も完全にそう思い込んでいる。
なので笑美がそっち系(、、、、)の趣味でない限り、
紳士クンに恋愛感情を抱く事は考えにくいのだ。
それを悟った紳士クンは、さっきまでの胸の高鳴りが一気にしぼみ、
放心状態になってしまった。
「お、乙子ちゃん?どうしたん?また体がしんどいの?」
紳士クンの異変に気付いた笑美は、体を離してそう言った。
その言葉にハッと我に返った紳士クンは、慌てて笑みを浮かべて取り繕った。
「あ、いやいや大丈夫。それよりボクの方こそ、
これからもずっと友達で居てね、笑美さん」
「もちろんやよ!」
紳士クンの言葉に快く頷く笑美。
そして紳士クンと笑美はニッコリ微笑み合った。
(まあ、笑美さんとはこの関係が一番いいのかも)
そう思った紳士クンはすっかり気分も楽になり、
ベンチから立ち上がりながら言った。
「それじゃあ帰ろうか」
「うん、そうやね」
笑美も頷いて立ち上がり、二人は公園を出ようとした。
と、その時だった。




