15 笑美の姉
「乙子ちゃんはホンマにええ子やなぁ。
それに引きかえウチときたら、やかましくてガサツで、
おしとやかさのカケラもなくて・・・・・・
だからウチ、エシオニア学園に入学させられてん。
あの学園に入学して、もうちょっとおしとやかな女性になりなさいって、
両親に言われて」
「へぇ、そうだったんだ」
「ウチな、ふたつ年上のお姉ちゃんが居んねん。
お姉ちゃんもエシオニア学園に通ってるんやけど、
こっちはま~あ物静かで礼儀正しくておしとやかで、
絵に描いたようなお嬢様タイプの人やねん」
「笑美さんとは違うタイプなんだね」
「全然違うねん!そんな人がウチのお姉ちゃんやから、
事あるごとにお姉ちゃんと比べられて、ゴチャゴチャ説教されるんよね。
『あんたはお姉ちゃんみたいにお利口にでけへんのか』とか、
『もっとお姉ちゃんを見習いなさい』とか。
そんな事言われたって、ウチは今更この性格を変えられへんし、
お姉ちゃんみたいにはなられへんし・・・・・・」
笑美はそう言うと、悲しそうな瞳で夕暮れの空を見上げた。
そんな笑美を見ていると、紳士クンは何だか胸が締め付けられる思いがした。
(いつも元気で明るい笑美さんにも、そんな悩みがあったんだ・・・・・・)
そう思った紳士クンは、少し強い口調になってこう言った。
「笑美さんは、無理してそのお姉さんみたいになる必要はないんじゃないかな?
笑美さんは笑美さんのままで居るのが一番いいと思うよ?」
「でも、それじゃあウチの両親はあかんって言うし・・・・・・」
「だからってご両親が笑美さんの事を嫌いになったりは絶対にしないよ。
それに笑美さんは今の方がとても魅力的だし、ボクは好きだけどなぁ」
「え?」
その言葉に笑美は目を丸くして紳士クンの方を見た。




