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紳士クンの、割と不本意な日々Ⅱ  作者: 椎家 友妻
第三話 紳士クンとショッピング
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10 鼻の奥のウズキ

 「ねえねえ、これなんかどう?ちょっと乙女ちっく過ぎるかなぁ」

 その下着はブラジャーとショーツに可愛らしいフリルが縫い付けられた、

淡い水色のものだった。

それを見た紳士クンは、無意識にこの下着を身に付けた笑美の姿を想像してしまった。

そして想像の中の笑美は、やけに色っぽい声色で紳士クンに語りかけた。

 『ねぇ乙子ちゃん、この下着、似・合・う?』

 「んんっ!」

 鼻の奥から血液がこみ上げるような感覚に襲われた紳士クンは、

咄嗟に自分の鼻を右手でつまんだ。

下着姿の女性等、

紳士クンが隠し持っているアハ~ン♡な本である程度馴れてはいるが、

身近な女の子の下着姿となると、その刺激たるや筆舌に尽くしがたいものがあった。

 すると笑美が目をパチクリさせながら紳士クンに尋ねた。

 「どうしたん乙子ちゃん?何か匂うの?」

 それに対して紳士クンは、鼻声でこう返す。

 「だ、大丈夫だよ?ちょっと鼻の奥がかゆかっただけだから。

あ、あはは・・・・・・」

 「そうなん?それならええけど。

ところで乙子ちゃんも自分の欲しいやつを探してみたら?

ここのお店は値段もお手頃やから買いやすいよ?」

 「う、うん、そう、だね・・・・・・」

 冷や汗をダラダラ流しながら答える紳士クン。

一応笑顔を浮かべてはいるが、顔色は真っ青だった。

 「大丈夫?何か乙子ちゃん、顔色悪いみたいやけど」

 心配そうに紳士クンの顔を覗き込む笑美。

それに対して紳士クンは必死に笑顔を保って言った。

 「だ、大丈夫大丈夫。それよりその下着、気に入ったなら一度試着してみたら?」

 「え?うん、そうやね。ちょっとつけてみようかな」

 紳士クンの言葉に頷いた笑美は、

近くの店員さんに声をかけて試着室まで案内してもらった。

 一方ある意味絶体絶命の大ピンチを切り抜けた紳士クンは、

 「はぁあああ・・・・・・」

 と魂が漏れ出そうな深いため息をついてガックリうなだれた。

 (とりあえずこれで一息つける)

 何回か深呼吸をして幾分落ち着いた紳士クンは、気を取り直して顔を上げた。

すると紳士クンの目に数多の下着が再び飛び込んできた。

 (わぁああっ⁉)

 心の中で絶叫する紳士クン。



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