4 男として見られない
翌日、紳士クンは待ち合わせ場所である駅前の広場に来ていた。
今の時刻は午前十時四十五分。
待ち合わせの時間まではあと十五分あり、笑美の姿はまだなかった。
今日の紳士クンの服装は、長袖の白のカットソーと黒のショートパンツ。
元気でボーイッシュな女の子(、、、)という印象の格好だ。
ちなみにこの服は撫子に借りた物である。
今日は女の子として出かけるんだから、
それにふさわしい服を着て行きなさいという撫子の気遣い(?)だった。
そしてそんな紳士クンの格好を不審に思う人はおらず、
むしろ若い兄ちゃんなどは
『お、可愛い女の子が居るなぁ』
的な目つきで紳士クンをチラチラ見ながら通り過ぎて行く。
(うぅ、この中でボクが男だって気づく人は、一人も居ないのかなぁ)
そう思いながら深いため息をつく紳士クン。
気付かれたら気付かれたで困るが、
全く気付かれないのも何だか悲しいという紳士クンの複雑な心の内だった。
するとそんな紳士クンの背中をポーンと叩き、
「乙子ちゃんお待たせ♪」
と言いながら笑美が現れた。
「あ、笑美さん」
と言って笑美の方に振り向く紳士クン。
そしてその笑美の姿を見て、目を丸くした。




