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紳士クンの、割と不本意な日々Ⅱ  作者: 椎家 友妻
第二話 紳士クンの御奉仕 後編
47/124

27 大団円

 「希里」

 という声とともに、希里の背後に一人の人物が現れた。

ちなみにその人物とは、夕べ希里のマンションに現れた希里の父親だった。

昨日のボサボサ頭で酔っぱらっていた時とは違い、

頭はビシッとオールバックにセットし、

キチンとネクタイを締めてスーツも着こなしている。

 そんな父親の突然の登場に、希里は驚きの声を上げた。

 「お、お父さん?どうしてここに?」

 そしてそんな希里の父の傍らには、

希里と顔がそっくりな大人の女性の姿があった。

その女性を見て、希里は呟くように言った。

 「お母、さん・・・・・・」

 (へぇ、あの人が希里お姉様のお母様なんだ。綺麗だなぁ)

 と、紳士クンがのんきに感心する中、希里は戸惑った表情で父親に尋ねた。

 「あの、これ、どういう事なの?状況がよく分からないんだけど・・・・・・」

 すると父親はうつむきながら希里に言った。

 「夕べ、そのメイドの子にガツンと言われて、やっと気付いたんだ。

家族がこんなにバラバラになったのは、全部俺のせいだったって。

ちょっと人より仕事ができて金が稼げるからって、天狗になってた。

それができるのも家族が居るからだって、全然分かってなかったんだ。

だから夕べあれから母さんに連絡して、謝って、

もう一度家族としてやり直させてくれって頼んだんだ。

そしたら母さんはそれを受け入れてくれて、またうちに戻ると言ってくれたんだ」

 すると傍らの希里の母親が、目に涙を浮かべながら希里に言った。

 「希里、今まで一人ぼっちにしていて本当にごめんなさい。

私、自分の感情だけで家を飛び出しちゃって、あなたの事をないがしろにしていた。

これからはもっとちゃんとした母親になれるよう頑張るから、

どうかこんなお母さんを許して・・・・・・」

 「お父さん、お母さん・・・・・・」

 両親の言葉に、そう言って肩を震わせる希里。

そんな希里の瞳からも、大粒の涙があふれ出した。

そして日鳥家の三人は固く抱き合い、再び家族の絆を取り戻したのだった。

 (良かったですね、希里お姉様)

 そう思いながら紳士クンもちょっとウルッときていると、

傍らの撫子が頭をポリポリかきながら言った。

 「何か凄く感動的なシーンみたいだけど、一体何がどうなってる訳?」

 そんな撫子に、紳士クンはニッコリ笑ってこう言った。

 「要するに、一件落着って事だよ」

 こうして、四日間の紳士クンのメイド生活は幕を下ろした。

この一件以来、日鳥家は以前よりも家族の絆を深め、

父親は浮気グセがなくなり(それでも時々キャバクラには行くらしいが)、

母親も機嫌よく家事にいそしみ(最近韓流ドラマにはまっているらしいが)、

希里は学園で随分社交的になった(撫子とは相変わらずよく喧嘩をしているらしいが)。

そして紳士クン自身も、この体験を通して大きく成長した事は言うまでもない。

 ちなみに紳士クンはこの日以来、

『私のメイドになって!』

と激しく令に迫られる事になるのだが、

それはまた、別のお話である。



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