26 希里、頭を下げる
「乙子!その傷どうしたの⁉」
翌日の朝、学園の校門の所でバッタリ紳士クン達と出くわした撫子は、
大きなばんそうこうを貼った紳士クンのホッペを見て声を荒げた。
ちなみにこれは夕べ紳士クンが、希里の父親に殴られた時に負った傷だが、
事を荒立てる気がサラサラない紳士クンは、苦笑しながらこう言った。
「いやあ、実は昨日学園から帰る時、ちょっと転んじゃって」
しかしそんな紳士クンの嘘をすぐさま見抜いた撫子は、
紳士クンの両肩をガシッと掴んでこう続ける。
「嘘おっしゃい!どんなこけ方をしたらそんな傷ができるってのよ⁉」
そして撫子は希里を睨みつけ、刺すような口調で言った。
「日鳥さん、乙子のこの傷、まさかあなたがつけたんじゃないでしょうね?」
「ち、違うって!これはボクが自分でコケてついた傷だから!
希里お姉様のせいじゃないよ!」
慌てて弁明する紳士クン。
しかし撫子は
「あんたは黙ってなさい」
と言ってはねつけ、希里に向かって言った。
「どうなのよ、日鳥さん」
すると希里は撫子に向かって深深と頭を下げ、神妙な口調でこう言った。
「その傷は、私のせいで(、、、、、)ついたものよ。
本当に、ごめんなさい」
「えっ・・・・・・」
まさか希里がこんなに素直に謝ると思っていなかった撫子は、
希里のその殊勝な態度に面を食らった顔になった。
そしてすっかり毒気を抜かれた撫子はこう続けた。
「いや、まあ、そこまでかしこまって謝ってくれなくてもいいけど?
乙子の傷も、そんなに大した事はないみたいだし?」
すると、その時だった。




