20 これからはお友達で
「アハハハッ!凄茎会長って面白い人ねぇ」
希里はお腹を抱えて笑いながらそう言った。
それに対して紳士クンは、困った顔でこう返す。
「希里お姉様、ワザと令お姉様を怒らせるようにあんな事を言ったでしょう?
どうしてそんなイジワルするんですか?」
すると希里は何ら悪びれる様子もなくこう続けた。
「あの人は乙子の事が大層お気に入りみたいだったから、
ちょっとからかってみたくなったのよ。
普段おしとやかで一分の隙も見せない凄茎会長があんなに取り乱すなんて、
乙子の事がよっぽど気に入っているのねぇ」
「そ、そんな事はないと思いますけど・・・・・・」
ちなみに令が紳士クンを気に入っているポイントは、
『女装が似合う可愛い男の子』という部分なのだが、
そんな事は口が裂けても言えない紳士クンだった。
すると希里は空を見上げながらシミジミと言った。
「あ~あ、そうは言っても、この特別授業も明日で終わりなのよねぇ。
何だかさみしいなぁ」
「希里お姉様・・・・・・」
そう呟いて希里の横顔を眺める紳士クン。
すると希里は一転して明るい口調になって言った。
「ま、別にいいんだけどね。生活が今までどおりに戻るってだけだし」
(でもそれは、また一人ぼっちの生活に戻るって事じゃあ・・・・・・)
そう思った紳士クンは、真剣な口調でこう言った。
「あの、希里お姉様!
ボクは明日で希里お姉様のメイドじゃなくなりますけど、
その、これからもずっとお友達です!だから、今まで通りなんかじゃないですよ!」
「乙、子・・・・・・」
紳士クンのその真剣な言葉に、目をまん丸にする希里。
そしてすぐにプッと吹き出し、アハハと笑いながらこう続けた。
「そうね、今まで通りじゃないわね。
マッタク、あんたって本当に笑わせてくれるわね。
こんな私とお友達だなんて」
「あ、すみません。目上のお姉様を友達扱いするなんて・・・・・・」
「ううん、そうじゃなくて、
この学園で私にそんな事を言ってくれたのはあんたが初めてだったから、
むしろ嬉しいわ」
「そ、そうですか」
「これからもお友達としてよろしくね、乙子」
「あ、はい。よろしくお願いします、希里お姉様」
そう言ってニッコリ微笑み合う二人。
そして時間はゆっくりと過ぎていき、
紳士クンのメイドとしての最後の夜を迎えようとしていた。




