15 勝負下着があればよい
「ところであんたって、普段から男もののパンツを穿いてるの?」
「えっ⁉」
その言葉に、紳士クンはスーパーの袋を床に落とした。
そして恐る恐る希里の方に振り返り、震える声で尋ねた。
「な、な、何で、希里お姉様がその事を知っているんですか?」
それに対して希里は事もなげにこう返す。
「洗濯物の中に入っていたからよ。
私は男ものの下着なんか持ってないし、あんた以外に考えられないでしょう?」
「う・・・・・・」
確かに紳士クンは夕べこの家のお風呂に入ったので、
その時穿いていたトランクスを、
いつものクセでそのまま洗濯かごに入れてしまっていた。
普段から下着だけは男もののそれで通していた紳士クンだが、
それが思わぬピンチを招いてしまった。
(ど、どうしよう⁉ボクが男だって事がバレた⁉
こ、ここは何とかうまくごまかさないと!)
そう思った紳士クンは、両手をバタバタ動かしながらこう言った。
「ち、違うんですよ!これは、あの、ボクが男とかいう訳じゃなくて、
その、色々事情がありまして、え~と・・・・・・・」
必死に弁解を試みる紳士クン。
しかし元々嘘が下手な紳士クンの頭に、気の利いた言い訳は全く浮かばなかった。
すると希里は特に興味もなさそうな様子で言った。
「別に馬鹿にしたりしないからそんなに必死に言い訳しなくていいわよ。
要するに男ものの下着の方が落ち着くんでしょ?それならそれでいいじゃないの」
「え、で、でも、変じゃないですか?」
「変じゃないわよ。それに、勝負下着はちゃんと持ってるんでしょ?」
「ええっ⁉え~と、はい・・・・・・」
あまりに予期せぬ質問に、紳士クンは思わず首を縦に振った。
すると希里は
「じゃあ問題ないじゃないの」
と言って再びソファーに寝転んだ。
それが果たして問題ない事なのかどうかは紳士クンには分からなかったが、
とりあえず自分が男だとバレずに済んだのでホッと胸を撫で下ろした。
(それにしても、希里お姉様には勝負をする相手が居るのかな?)
と、ふと思った紳士クンだったが、それがおかしな妄想に発展しそうだったので、
慌てて首を横に振ってそれをかき消した。
そして踵を返してスーパーの袋を拾い直し、早足でキッチンへ向かったのだった。




