14 メイド姿でお買い物
その日の放課後、学園を出た紳士クンは、
近所のスーパーに寄ってカレーの材料とお米を買った。
メイド姿のままでお店まで行ったので、
周囲の客達は物珍しげな表情で紳士クンを眺めていたが、
後の仕事の事で頭が一杯の紳士クンに、そんな視線を気にしている余裕はなかった。
そして買い物を終えてマンションに戻ると、
部屋着姿でリビングのソファーに寝転んだ希里が、
「おかえり~」
と言って紳士クンに手を振った。
「はい、ただいま戻りました」
重い荷物を持ってここまで来た紳士クンは疲れた声でそう言い、
スーパーのビニール袋を一旦床の上に置いた。
それを見た希里はムクッとソファーから起き上がって紳士クンに尋ねる。
「あ、お米も買って来たんだ。炊飯器でご飯炊いてくれるの?」
「そうですよ。今日はカレーライスなんですから」
「嬉しいなぁ。最近はインスタントやレトルト食品ばっかり食べてたから、
ちゃんと炊飯器で炊いたご飯なんか久し振りだわ」
紳士クンの言葉に、希里は心底嬉しそうに笑って膝を抱えた。
「そんなバランスの悪い食事ばっかり食べてちゃ駄目ですよ?
今は体が成長する時期なんですから、
ちゃんとバランスのとれた食事をしないといけないって・・・・・・」
『ボクのお母さんも言ってましたよ』と言いかけて、
紳士クンは慌ててその言葉を飲みこみ、代わりにこう続けた。
「さ、さぁて、それじゃあキッチンを片付けてカレーの準備をしないと。
あ、洗濯もしないといけないんだった」
「ああ、洗濯なら私がやっといたから、
あんたはカレーの準備に専念してくれたらいいわよ」
「あ、そうですか。助かります」
紳士クンはそう言うと、スーパーの袋を持ってキッチンに向かおうとした。
するとそんな紳士クンの背中に、希里は何気ない口調でこう言った。




