12 日鳥家の事情
「でも半年前、お父さんが浮気していたのが分かって、
怒ったお母さんはそのまま家を飛び出して行ったの」
「ええっ⁉そ、そうなんですか⁉」
「そうよ。で、お父さんの方はむしろ開き直っちゃって、
浮気相手のマンションに入り浸るようになったの。
今じゃあ月に一度か二度しか帰って来ないわ」
「そ、そんな・・・・・・」
「しかもたまにうちに帰って来たと思ったら、
酒を飲んでベロベロに酔った状態で、父親面して私に説教するのよ?
『お前はあんな母親みたいな女になるな』とか
『変な男に引っかかったら人生終わりだぞ』とかね。
アンタにだけは言われたくないって感じよね」
「う、う~ん・・・・・・」
「でもお母さんもひどいのよ?
私の事をほったらかして出て行ったきり、何の連絡もよこさない。
私の事なんかもうどうでもいいのかしら?」
希里はそこまで言うと、自虐気味に笑った。
一方あまりにショッキングな事実を聞かされた紳士クンは、
顔をひきつらせたまま何も言う事が出来なかった。
そんな紳士クンに、希里はイタズラっぽい口調で言った。
「マッタク、何を喋らせてくれるのよあんたは」
「す、すみませんでした。
まさか希里お姉様が、そんな境遇に置かれていたなんて・・・・・・」
紳士クンは深深と頭を下げながら、希里に詫びを入れた。
が、希里は気にするでもなく全然違う方を向きながらこう言った。
「そういえばあの辺だったわね、私があんたの給仕カードを拾ったのは」
「え?」




