11 お弁当には卵焼きとソーセージが入っていればよい
購買でパンとジュースを買った希里と紳士クンは、
それを持って校舎の裏庭にやって来た。
そして空いていたベンチに座り、買って来たパンをパクパクと食べ始めた。
「明日はちゃんとお弁当を作ってよね」
希里はそう言いながら、いちごのジャムパンを頬張った。
それに対して紳士クンは、コロッケパンを食べながらこう返す。
「それは別に構わないんですけど、ボク、料理はあまり上手じゃないですよ?」
「でも卵焼きやソーセージを焼くくらいはできるでしょ?」
「まあ、それくらいならできますけど」
「なら充分じゃない。
お弁当には卵焼きと焼きソーセージが入っていれば、それでOKなのよ」
「はあ、そういうものですか」
「そういうものなのよ」
(でもそんなにお弁当を作って欲しいなら、
希里お姉様のお母様に頼めばいいんじゃ・・・・・・)
と紳士クンは言いかけたが、そこである事を思い出し、咄嗟にこう言い変えた。
「そういえば、希里お姉様はあのマンションに、一人で住んでらっしゃるんですか?」
「今はね」
「今は?という事は、以前はご両親も一緒に住んでらっしゃったんですか?」
「・・・・・・」
紳士クンの問いかけに希里は少し間を置いたが、すぐに口を開いた。
「そうね。半年くらい前までは、家族三人で暮らしていたわ」
(あ、もしかしてボク、マズイ事を聞いちゃったかな?)
そう思った紳士クンは、
「と、ところで」と言って話題を変えようとした。
が、希里はそれを遮るように言葉を続けた。




