9 あまりに違う境遇
「何かお疲れやなぁ乙子ちゃん。メイドの仕事、そんなに大変やったん?」
ぐったりしている紳士クンに、笑美が心配そうな顔で問いかける。
それに対して紳士クンは精一杯の笑みを浮かべて答えた。
「う~ん、まあね。笑美さん達はどうだった?」
紳士クンが尋ねると、華子がニッコリ微笑んで答えた。
「すごく楽しかったですよ?
このたびお仕えする事になったお姉様がとても優しい方で、
家にお邪魔しても大した仕事はしなくてよかったし、
夜はとても豪華なディナーをごちそうしてくれたんです♪」
すると笑美も嬉々とした表情でこう続ける。
「ウチも今回お仕えする事になったお姉様がメッチャいい人で、
おまけに家が物凄いお金持ちやから、
今日はその人のお屋敷で開かれる社交パーティーに参加させてもらえるねん♪
メッチャ楽しみやわぁ~」
笑美も華子も、それは楽しそうな笑みを浮かべている。
一方の紳士クンは、そんな彼女達の話をひきつった笑みを浮かべながら聞いていた。
ちなみに紳士クンの昨日の夕食は、
袋タイプのインスタントラーメンとパックご飯のみ。
おまけに希里には
『あんたはメイドなんだから、もっとマシな食事を用意しなさいよ!』
と散々文句を言われた。
(同じメイドのはずなのに、どうしてこんなに境遇が違うんだろう・・・・・・)
そう考えると、もう苦笑いを浮かべるしかない紳士クンだった。
するとそんな紳士クンに、華子と笑美が心配そうに声をかける。
「やっぱり元気がないですね乙子さん。昨日何かあったんですか?」
「もしかして、お仕えしたお姉様にイジメられたとか?」
それに対して紳士クンは、両手を横に振りながら言った。
「だ、大丈夫だよ。
別に何かあった訳じゃないし、イジメられた訳でもないから」
まさか自分が仕える事になった家がとんでもないゴミ屋敷だとは、
とても言えない紳士クンだった。
と、その時だった。




