6 希里お嬢様のマンション
「ここが私のマンションよ」
そう言って希里が指差した建物は、都市部にそびえ立つ高層マンションだった。
ざっと三十階はあるだろうか?
真下から見上げると、最上階の部屋がはるか上空に見える。
「凄く立派マンションに住んでるんですね」
マンションを見上げながら紳士クンがシミジミそう言うと、希里は、
「そう?別に普通でしょ?」
と事もなげに言い、マンションの玄関に立った。
そして自動ドアの横にあったパネルに右手を当てると、
『認証しました』という電子音声が流れ、
それと同時にマンションの自動ドアがウィーンと開いた。
「さ、行くわよ」
と言い、希里は中に入って行く。なので紳士クンも慌てて後に続いた。
希里の部屋は、マンションの二十五階にあった。
エレベーターから降りた紳士クンが廊下の柵から下を見下ろすと、
地上を歩く人が点にしか見えなかった。
「た、高いですね・・・・・・」
「当たり前よ。ここは二十五階なんだから」
震える声を出す紳士クンに希里はそう言うと、スタスタと廊下を歩いていく。
そしてあるドアの前で立ち止まると、ドアノブの上に付いていた差し込み口に、
ポケットから取り出したカードを差し込んだ。
すると同時にガチャッと鍵が開いた音がして、希里はそのドアを開けて紳士クンに言った。
「入って」
「は、はい」
紳士クンは玄関をくぐり、靴を脱いで廊下に上がった。




