14 カードの行方
愛雛先生がそう言うと、帰りの挨拶を終えた後、
ほとんどの生徒が教室から出て行った。
そして教室に残ったのは五人程度で、その中に紳士クンも入っていた。
(とりあえず、給仕カードを無くした事を先生に言わなきゃ)
そう思った紳士クンは、木比篠先生に歩み寄ってこう言った。
「あの、木比篠先生。
実はボク、あの給仕カードを無くしてしまったんですけど・・・・・・」
するとそれを聞いた木比篠先生は眉間にシワを寄せて声を荒げた。
「何ですって⁉給仕カードはこの特別授業を受ける為に絶対必要な物!
それを無くしたとはどういう事ですか⁉」
「ひぃいっ!」
木比篠先生の剣幕にビビリまくる紳士クン。
やはりこの先生は、見た目だけでなく中身も怖かった。
そして木比篠先生は厳しい口調でこう続けた。
「そんな生徒は特別授業を受ける資格はありません!
あなたはもう特別授業に参加しなくて結構です!」
「そ、そんなぁ・・・・・・」
紳士クンは思わず泣きそうになった。
メイド服を着るのは嫌だったが、こうもハッキリ特別授業を受けるなと言われると、
それはそれで辛いものがあった。
と、その時だった。
傍らの愛雛先生が、名簿が書かれたプリントを眺めながら口を挟んだ。
「あれ?でも蓋垣さんは、二年の生徒に給仕カードを渡しているわよね?」
「え?」
愛雛先生の意外な言葉に目を丸くする紳士クン。
(ボクの給仕カードは昼休みに無くしたはずなのに、どうして?)
そう思った紳士クンは、愛雛先生に尋ねた。
「あの、ちなみにボクの給仕カードを受け取った人って、何ていう名前でしたっけ?」
「二年藤組の日鳥希里さんでしょ?あなたが渡したのに覚えてないの?」
「へ?あ、ああ!そうでした!
いやあ、うっかりド忘れしてました。アハハ~」
愛雛先生の言葉を聞いた紳士クンは、そう言ってワザとらしく笑った。
するとそれを見た木比篠先生は呆れた様子で、
「マッタク、カードを渡した相手どころか、渡した事自体を忘れるなんて。
おっちょこちょいにも程がありますよ?」
と言い、深いため息をついた。
「ア、アハハ・・・・・・」
下手な事を言うとまた怒られそうなので、紳士クンは笑ってごまかした。
(それにしても、日鳥希里さんっていうのは、一体誰なんだろう?)
そう考えながら紳士クンは、昼休みに見た大きなリボンを付けた女子生徒の事を思い出した。
(とりあえず、二年藤組の教室に行ってみよう)
そして紳士クンはさっそく教室を出て、二年藤組の教室へと向かった。




