9 令も参戦
という声とともに、校舎の入口から令が現れた。
そして凄い剣幕で紳士クン達の元へ歩み寄って来た。
「令じゃないか。どうしたんだそんなに怖い顔をして」
近くまでたどり着いた令に、太刀は軽い口調で尋ねる。
すると令は顔を真っ赤にしながら声を荒げた。
「どうしたもこうしたもないわよ!タッちゃんがその手に持っている物は何⁉」
「ん?ああこれか?乙子の給仕カードだ」
「どうしてタッちゃんがそれを持ってるのよ⁉」
「決まってるじゃないか。乙子が私のメイドになる事になったんだ」
「どうせタッちゃんが乙子ちゃんから無理やり取り上げたんでしょう!」
「なっ⁉人聞きの悪い事を言うな!これは乙子が望んだ事なんだ!なあ乙子⁉」
「えっ⁉え~と・・・・・・」
いきなり太刀に話を振られ、言葉を詰まらせる紳士クン。
するとその態度を瞬時に察した令は、更に太刀に詰め寄った。
「ホラ!やっぱりそうじゃないの!
タッちゃんが無理やりそのカードを乙子ちゃんから取り上げたのね!」
「ぬぅっ、確かにそうかもしれないが、これは乙子をもっと鍛える為なんだ!」
「何言ってるのよ!そもそも乙子ちゃんは私のメイドになるって約束をしてたのよ⁉」
「えっ⁉そうでしたっけ⁉」
令の言葉に紳士クンは思わず声を上げたが、太刀は構わずこう続けた。
「その約束だってどうせお前が勝手に取り付けたんだろ!」
「そんな事ないもん!私と乙子ちゃんは固い絆で結ばれてるんだから!」
「何が絆だ!そもそもお前が普段からそうやってベタベタするから、
乙子はだらしない人間になってしまうんだ!」
「違うもん!大体タッちゃんは何かと厳し過ぎるのよ!
甲子園に行くんじゃあるまいし!」
「何を言う!女の私達が社会に出てもたくましく生きて行くには、
今のうちからビシバシ鍛えておかないといけないだろ!」
「とにかく!乙子ちゃんは私のメイドさんになるの!だからその給仕カードを返して!」
「断る!このカードは私の物だ!」
「私のよ!」
令はそう言うと同時に、太刀の右手から素早く給仕カードを奪い取った。しかし太刀は
「私のだっ!」
と声を上げてそのカードを奪い返す。
かくして令と太刀のカード争奪戦が始まった。




