20 お姉ちゃん現る
ガチャッと突然資料室のドアが開け放たれた。
「わぁっ⁉」
思わず声を上げてそちらへ振り向く紳士クン。
その瞬間令奈は口から出かけた言葉をグッと飲み込んだ。
ちなみに突然資料室に現れたその人物とは、紳士クンの姉の撫子だった。
「お、お姉ちゃん⁉どうしてここに⁉」
紳士クンが驚きの声を上げると、撫子は事もなげにこう答えた。
「午後の授業で使う資料を取りに来たのよ。
あんたこそこんな所で何やってんのよ?って、あら?」
令奈の姿に気づいた撫子は、紳士クンの元に歩み寄ってこう続けた。
「ねぇ、もしかしてこの子が、令お姉様の妹さん?」
「あ、う、うん」
紳士クンが頷くと、撫子は「へぇ~」と言いながら令奈の全身を眺め、
感心するように言った。
「やっぱり令お姉様に似て美人ねぇ。
おまけに細身で手足も綺麗だし、うらやましいわマッタク」
「お、お姉ちゃん」
紳士クンはそんな撫子の袖をチョイチョイと引っ張り、声をひそめて耳打ちした。
「ボク、まだ令奈さんに男かどうか確認してないから、
そういう話題には触れないようにしてね」
「あら、そうなの?分かったわ」
撫子は普通の声の大きさでそう答えると、令太の方を見てこう言った。
「初めまして、私は乙子の姉の蓋垣撫子よ。
あなたは令お姉様の妹の、令奈さんね?」
「は、はい・・・・・・」
令奈は撫子に警戒心を抱いた表情で頷いた。
そんな令奈に撫子が、次に言った言葉はこれだった。
「あんた、実は男なんでしょ?」




