19 伴兆太郎と同じ雰囲気
「れ、令奈さんは、この学園に転校するのが凄く嫌だったんだね?どうして?」
「それは、言えない。言いたくない」
消え入るような声で呟く令奈。
なので紳士クンは慌てて取り繕いながらこう続けた。
「あ、ご、ごめん、嫌な事聞いちゃって。
で、でも、今日はちゃんと教室まで来てくれたんだね。
昨日の様子だと、もう来てくれないのかと思ってたけど」
「そ、それは・・・・・・」
令奈はそう呟くと、チラッと紳士クンの方を見やった。
よく見ると、頬がにわかに赤らんでいる。
その表情はまるで、恋する相手を前にした時のようなそれだった。
そしてその雰囲気は、当の紳士クンも感じ取っていた。
(あ、あれ?この雰囲気って、まさか・・・・・・)
そう、今の令奈が醸し出す雰囲気は、
伴兆太郎が紳士クンを見る時のそれにとても似ていた。
つまり令奈は、紳士クンに恋をしてしまった可能性が非常に高いのだ。
(え、えーっ⁉ま、まさか令奈さん、ボ、ボクの事を⁉
でも令奈さんは男の子。いや、まだそうと決まった訳じゃないけど、えーっ⁉)
思わずたじろぐ紳士クン。
そんな紳士クンをまっすぐに見つめ、令奈は真剣な顔で言った。
「乙子、さん。お、オレ、実は、あんたの事が・・・・・・」
「う、うん・・・・・・」
令奈の言葉につばを飲む紳士クン。
(まさか令奈さん、ここでボクに告白するの⁉
どうしてボクは、男の子ばかりに告白されるの⁉)
そう思いながら紳士クンは自分の運命を呪った。
そして令奈が紳士クンに
「好──────」
と、言いかけた、その時だった。




