18 資料室の令奈
紳士クンの様子を見て華子はそう言ったが、
紳士クンの本当の目的はトイレではなく令奈だった。
(一度、ちゃんと令奈さんと話しあわないと)
そう考えた紳士クンは、令奈を探して校舎の中をあちこち歩き回った。
が、やみくもに歩きまわっても見つかるはずがなく、
紳士クンは一度立ち止まり、令奈が行きそうな場所を思い出してみた。
(となると、令奈さんが行きそうな場所はあそこしかないか)
と思い至った紳士クンがやって来たのは、校舎一階にある資料室だった。
資料室の前に立った紳士クンは、ゆっくりドアノブを回してそっとドアを開けた。
するとその資料室の中に、踏み台に座って膝に顔を埋める令奈の姿があった。
紳士クンは静かにドアを閉め、そんな令奈のそばに歩み寄って声をかけた。
「あの、令奈、さん?」
すると令奈は「うわっ⁉」と声をあげて咄嗟に立ちあがった。
そして紳士クンの顔を見ると、ホッとしたような顔で言った。
「な、何だ、蓋垣さんか・・・・・・」
それに対して紳士クンは、ニコッと笑ってこう返す。
「乙子でいいよ。それより驚かせちゃってごめんね?今、ちょっといいかな?」
「お、おう・・・・・・」
令奈は紳士クンから目を逸らしながらうなずく。
その令奈に、紳士クンは心配そうな顔をして尋ねた。
「令奈さんはどうして、クラスの皆にあんな態度をとるの?
あれじゃあいつまでたってもクラスの皆と仲良くなれないよ?」
すると令奈はぶっきらぼうな口調で答える。
「フン、別にいいよ。オレはクラスの奴らと仲良くする気なんてサラサラねぇし」
「・・・・・・」
令奈の言葉に黙り込む紳士クン。
(それってやっぱり、令奈さんが本当は男の子で、
それなのに無理やり女子校に転校させられたから?
で、でも、その事を直接本人に聞くのも悪いし・・・・・・)
そう思った紳士クンは、少し違う角度から聞いてみる事にした。




