8 紳士クンが言われて一番嬉しい言葉
なので紳士クンは目一杯両手を横に振ってこう続けた。
「い、いや、でも、ボクなんか全然体力も根性もないから、
とても太刀お姉様の特訓にはついていけないと思うんですけど・・・・・・」
「何を言う!
お前はあの時ナイフを持った相手にも怯む事なく立ち向かって行ったじゃないか!
根性が無い者にあんな事はできん!」
「あ、あの時は、無我夢中だったから・・・・・・」
「そういう時にこそその人間の真価が分かるんだ!
あの時のお前は、その辺のなよなよした男なんかよりもよっぽど男らしかったぞ!」
「え⁉ほ、本当ですか⁉」
太刀の言葉に、紳士クンはそう言って目を輝かせた。
これまでの人生で『男のくせに』と言われた事はあっても
『男らしい』と言われたのは初めてで、
紳士クンは飛び上がりたいほど嬉しい気持ちになった。
そんな紳士クンに、太刀は爽やかな笑顔でこう続けた。
「だから乙子、私のメイドになれ。
そしたらもっと強くてたくましい女になれるよう鍛えてやる」
「うっ・・・・・・」
その言葉に再び顔を引きつらせる紳士クン。
しかし太刀はそんな紳士クンに構わず、手を差し出してこう言った。
「さあ、お前の給仕カードを私に渡せ。それでお前は正式に私のメイドになれる」
「え、え~と・・・・・・」
紳士クンは言葉を詰まらせた。
確かに今給仕カードを持ってはいるが、それを太刀に渡していいものか、
この場で決める事ができなかった。
しかし太刀は右手を差し出し、
「さあ」と言って詰め寄って来る。
なので紳士クンはスカートのポケットから給仕カードを取りだしたが、
やっぱりどうにも渡す気になれなかった。
すると太刀はそんな紳士クンの手元から、ひょいっと給仕カードを取り上げた。
それを見た紳士クンは「あっ」と声を上げたが、
その時にはもう給仕カードは太刀の右手にあった。
「これでお前は明日からの四日間、私にメイドとして仕えるんだ。
ビシバシ鍛えてやるから覚悟しろよ」
太刀は嬉々とした口調でそう言った。
が、その時だった。
「ちょっと待ちなさーい!」




