11 実は見られていた
「なっ⁉」
「えっ⁉」
その言葉には令奈だけでなく紳士クンも驚きの声を上げた。
どうして令がその事を知っているのか?
令奈が再び声を荒げた。
「な、な、何でお前がその事を知ってるんだよ⁉」
それに対して令。
「あの時乙子ちゃんが嘘をついてるってすぐに分かっちゃったから、
だまされたフリをしてまた戻って来たの。
そしたら令奈ちゃんと乙子ちゃんが資料室でイチャイチャしてるじゃないの♡」
「い、イチャイチャなんかしてねぇよ!
あれはただ、その子がオレの傷の手当てをしてくれただけだ!」
「そして令奈ちゃんはそんな心優しい乙子ちゃんに・・・・・・」
「わーっ!わーっ!うるさい黙れ!もう何も言うな!」
令奈はそう叫ぶと、慌てて右手で令の口をふさごうとした。
しかし令はそれをひょいとかわしてこう言った。
「そういえば令奈ちゃんが転入するクラスは、確か乙子ちゃんのクラスなのよね?」
「あ、は、はい」
紳士クンがそう答えると、令奈の体がピクッと反応した。
令はそんな令奈の方に向き直ってこう続けた。
「という事は、令奈ちゃんがこの学園に大人しく転入すれば、
毎日乙子ちゃんと会う事ができるのよ?
これってとってもハッピーな事じゃない?」
「ふ、フンッ、興味ねぇよ」
令奈はぶっきらぼうにそう言うと、令の胸ぐらから手を離し、
部屋のドアに向かって歩き出した。
そして一旦紳士クンの横で立ち止まると、
「きょ、今日は、ありがとう・・・・・・」
と、消え入るような声で呟き、そのまま逃げるように部屋を出て行った。




