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紳士クンの、割と不本意な日々Ⅱ  作者: 椎家 友妻
第五話 紳士クンと謎の美少女
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10 資料室にお姉様

 放課後になった。

 紳士クンは午後の世界史の授業で使った資料を返す為、

再び資料室に向かっていた。

そして廊下を歩きながら、昼休みに会った令奈の事をずっと考えていた。

 (まさかあの子が令お姉様の妹さんだったなんて。

前に弟さんが居るっていうのは聞いてたけど、妹さんも居たんだなぁ。

でも、どうしてこの学園に転校するのがそんなに嫌なんだろう?)

 等と考えているうちに、紳士クンは資料室の前にたどり着いた。そして、

 (あの子、まだここに居るかな?)

 と思いながらドアノブに手をかけようとした、その時だった。

 「離せバカ姉貴!」

 という、何やら穏やかではない様子の声が、部屋の中から聞こえた。

 「な、何だ?」

 紳士クンは思わず声を上げ、慌てて資料室のドアを開け放った。

すると部屋の中で、令が令奈の両腕を掴み、壁に抑えつけていた。

 「れ、令お姉様⁉どうしてここに⁉」

 紳士クンが驚きの声を上げると、令は紳士クンの方に振り向き、

不敵な笑みを浮かべて言った。

 「ひどいじゃないの乙子ちゃん。この私に嘘をつくなんて」

 「いや、あの、これは、その・・・・・・」

 言い逃れる術のない紳士クンは、あたふたしながら言葉を詰まらせた。

すると令奈が令の両手を強引に振り払って声を荒げた。

 「オレがかくまってくれって頼んだんだ!その子は何も悪くねぇよ!」

 「あら、あなたが他人をかばうなんて珍しいわね。もしかしてもう仲良くなったの?」

 「そ、そんなんじゃねぇよ!」

 からかうように言う令に、令奈はぶっきらぼうに返す。

 「え、え~と・・・・・・」

 どういうリアクションをすればいいのか分からない紳士クンは、

その場に突っ立ったまま頭をポリポリかいた。

そんな紳士クンに、令はニコニコしながら言った。

 「もう名前は知ってるかもしれないけど、改めて紹介するわね。

この子は私の妹の令奈ちゃん。

今日からこの学園に転入するはずだったんだけど、

朝教室に向かう途中に逃げ出しちゃったのよねぇ。一体どうしてかしら?」

 そう言ってさも愉快そうに令奈を見る令。

すると令奈は怒りに満ちた表情で令を睨みつけながら言った。

 「そんな事、お前が一番よく分かってるんじゃねぇか?」

 しかし令は素知らぬ顔でこう返す。

 「さあ?何の事だかさっぱり分からないわねぇ」

 「てめぇっ!」

 令奈は令の胸ぐらをガシッと掴んで声を荒げた。

しかし令は悪びれる様子もなくこう返す。

 「よかったら教えてもらえないかしら?乙子ちゃんだって知りたいだろうし」

 「うっ・・・・・・」

 令のその言葉に、令奈は言葉を詰まらせながらうつむいた。

すると令はニンマリ微笑んでこう続ける。

 「自分の口元をハンカチで優しく拭いてくれた愛しの女の子に、

あの事(、、、)は言いにくいわよねぇ」



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