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9 彼女は妹
「いっけない!頼まれた資料を持って早く教室に戻らないと!」
紳士クンはそそくさと棚から必要なファイルを数冊取り出し、
それを両手に抱えて彼女に言った。
「それじゃあボクは行くから。
ここに隠れていれば、令お姉様に見つかる事はないと思うよ」
そして早足で資料室から出て行こうとすると、
「ま、待ってくれ!」
と、彼女が紳士クンを呼び止めた。
「うわっと。え?何?」
つまずきそうになったのを何とかこらえ、紳士クンは立ち止まって振り向いた。
すると彼女はにわかに頬を赤らめながら言った。
「あ、あんた、名前は?」
それに対して紳士クンは、ニコッと笑って答えた。
「蓋垣乙子です」
「蓋垣、乙子・・・・・・」
彼女はそう呟くと、一転して語気を強くして言った。
「お、オレは、令奈!凄茎令奈だ!」
「凄茎?」
どこかで聞いた事がある苗字に、紳士クンは眉をひそめる。
すると令奈と名乗った彼女は、神妙な口調でこう続けた。
「凄茎令の、妹だよ」
「え?」
その言葉に目を点にする紳士クン。
そしてすぐさま大きく目を開き、驚きの声を上げた。
「ええええっ⁉」




